JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS13] 地震活動

コンビーナ:吉田 康宏(気象庁気象大学校)

[SSS13-08] 2018年胆振東部地震に先行した地震活動の長期静穏化

*伊藤 秀晟1勝俣 啓1 (1.北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)

2018年9月6日に発生した胆振東部地震は、北海道全域に停電をもたらし、一部では液状化現象を引き起こすなど広範囲にわたって被害を及ぼした。この胆振東部地震はプレート内で発生した地震であるにも関わらず、震源の深さが約37kmと非常に深い場所で発生したため特異な地震であると言える。

本研究ではこの特異な地震に対し、Sobolev and Tyupkin (1997)が開発したRTL法を用いて、発生直前の地震活動に静穏化が見られていたのか解析を行った。RTL法は、Region(距離)・Time(時間)・Length(断層長)の3つのパラメータが用いられる。これらのパラメータからRTLの値を計算するが、この値が正の値になると地震活動が活発になっていることを意味し、負の値になると地震活動が静穏化していたことを意味する。本研究における解析期間は2002.68年-2018.68年であり、気象庁一元化震源カタログ内のM≧3.0の地震を使用した。また断層長はマグニチュードを用いて算出されるが、本研究ではKasahara (1981)の手法を用いて計算を行った。パラメータの組み合わせを網羅的に変更してRTL値の変動を求めた結果、胆振東部地震発生の約1年前において解析対象域では地震活動が静穏化していた、という結果が得られた。

今後の課題として、以下の通りである。(1)本研究ではM≧3.0の地震を用いたがM≧2.0のように下限マグニチュードを変える、(2)余震等の影響を取り除くデクラスタリング処理を行った地震のデータを用いた検証、そして(3)ETASを使用した数値シミュレーションを行い、胆振東部地震の本震発生前の静穏化がどの程度の頻度で観測されるかを検証する。