[SSS13-09] 2019年山形県沖地震の地震活動と東北日本弧の地殻変動
キーワード:2019年山形県沖地震、地震活動、地殻変動、地殻すべり、島弧の隆起
2019年6月18日22時22分頃,山形県-新潟県の境界に近い日本海の沖合約8kmの深さ14kmで,Mj6.7(Mw6.4)の地震が発生した (気象庁,2019).この地震によって,重傷・軽傷の合計41名の人的被害が避難途中における転倒などで発生するとともに,瓦の落下の被害を中心とした800棟弱の住家被害が発生した(気象庁,2019).最大震度は,震央から約9km南南東の新潟県村上市府屋において6強が観測されたが,とくに南南西方向の新潟県村上市街地に向かって急激に弱くなる傾向がみられた.
この地震の発震機構に関して,ともに北北東-南南西走向で,西北西にやや広角度に傾斜する節面と東南東に緩く傾く節面が求められた(気象庁,2019).その後の余震活動からすると,後者の,北北東-南南西走向で東南東に緩く傾く節面が,実際に地震を引き起こした断層面に対応すると考えられる.
ここでは,今回の地震の,東北日本弧における地形・地質的位置をもとに,東北日本弧の地殻変動について考えてみたい.
東北日本弧の地形・地質的な特徴は,島弧の中軸部にあって,島弧に平行な高まりをなす奥羽脊梁山地と,これに平行な日本海側の出羽丘陵,そして太平洋側の阿武隈山地,北上山地がある.奥羽脊梁山地から日本海側では,奥羽脊梁山地および出羽丘陵に直交する高まりが複数存在する.これらの高まりは,いずれも西北西-東南東方向の伸びをもつ,北から,白神山地-白地山,本山-太平山・森吉山-駒ヶ岳-八幡平,鳥海山-神室山-荒尾山・栗駒山,金峰山-月山-葉山-船形山,烏帽子岳-大鳥屋岳-伊東岳-大朝日岳-大鷹山-二ツ森山,二王子岳-飯出山-東吾妻山,弥彦山-栗ヶ岳-御神楽岳-博士岳-那須岳の7つの山列である.ただし,これらの山列は,島弧方向の山列の間および側面にある低地帯と交差する部分では,明瞭で無くなる.すなわち,島弧方向の山列・低地帯と,それに直交する方向の山列とそれらの間の低地帯は,互いに網のように重なり合って相互に影響を与えながらそれぞれの地形を造っている.
地形的に見れば,これら島弧に直交方向の山列は,日本海に対して突き出るかたちをなしている.それは,特に,金峰山-月山-葉山-船形山の山列とその南の烏帽子岳-大鳥屋岳-伊東岳-大朝日岳-大鷹山-二ツ森山の山列で顕著である.
地質的に見ても,これらの山列は日本列島の基盤をなす先第三系花崗岩類が露出するとともに,場合によっては第四系火山の活発な活動が見られる.従って,これらの山列は,第四紀における活発な隆起活動によるものであるということができる.このような隆起活動は,東北日本弧中軸部においては,地震波トモグラフィーによって地下数10km以浅におけるマグマの存在が推定されており(長谷川・中島,2009),直交須流方向の山列もまたマグマの存在に支えられている可能性を持っている.
このようなマグマによって支えられている東北日本弧の地殻の状況は,島弧を横断する方向の地震投影断面において,浅層地震の下限が中軸部を高まりの頂点として両側に緩く深くなっていく様子を見ることができる.さらに,中軸部の周辺では,深さ40km程度から上に向かって棒状に伸びており,低周波地震の存在と相まって,マグマの上昇を表しているとみられる.
今回の2019年山形県沖地震は,規模は大きくないが,このような地形・地質の状況の中で発生した地震として見てみると,金峰山-月山-葉山-船形山の山列とその南の烏帽子岳-大鳥屋岳-伊東岳-大朝日岳-大鷹山-二ツ森山という2つの山列が複合して緩い複合した円弧をなして日本海に突き出る地形をなしている部分の先端部の地下で起こっていると見ることができる.
2019年山形県沖地震が発生した断層面は,陸側に緩く傾いた面をなしていると考えられるが,すなわち,これは,島弧に直交方向の山列をなす隆起部の高まりをなす陸側の地殻が,日本海側の海域の低地に向かって落ち込む部分で,グラビティスプレッディングによって海側の地殻に乗り上げている境界面と見ることができる.
ちなみに,陸側の鶴岡市南部~村上市北部の葡萄山塊には,北東-南西方向の西側に傾斜した正断層が複数発達しており,リストリック断層の形状を持っており.葡萄山塊の日本海側に向かう地滑り的な運動が推定されている.今回の地震は,このような日本海側に地滑り的に移動するブロック群の下面のすべり面で起こった地震である可能性がある.
文献:
長谷川 昭・中島淳一 (2009) 地震波トモグラフィによる東北日本弧の深部構造と造構運動.地球科学,61, 201-210.
気象庁, 2019, 令和元年6月地震・火山月報(防災編).
この地震の発震機構に関して,ともに北北東-南南西走向で,西北西にやや広角度に傾斜する節面と東南東に緩く傾く節面が求められた(気象庁,2019).その後の余震活動からすると,後者の,北北東-南南西走向で東南東に緩く傾く節面が,実際に地震を引き起こした断層面に対応すると考えられる.
ここでは,今回の地震の,東北日本弧における地形・地質的位置をもとに,東北日本弧の地殻変動について考えてみたい.
東北日本弧の地形・地質的な特徴は,島弧の中軸部にあって,島弧に平行な高まりをなす奥羽脊梁山地と,これに平行な日本海側の出羽丘陵,そして太平洋側の阿武隈山地,北上山地がある.奥羽脊梁山地から日本海側では,奥羽脊梁山地および出羽丘陵に直交する高まりが複数存在する.これらの高まりは,いずれも西北西-東南東方向の伸びをもつ,北から,白神山地-白地山,本山-太平山・森吉山-駒ヶ岳-八幡平,鳥海山-神室山-荒尾山・栗駒山,金峰山-月山-葉山-船形山,烏帽子岳-大鳥屋岳-伊東岳-大朝日岳-大鷹山-二ツ森山,二王子岳-飯出山-東吾妻山,弥彦山-栗ヶ岳-御神楽岳-博士岳-那須岳の7つの山列である.ただし,これらの山列は,島弧方向の山列の間および側面にある低地帯と交差する部分では,明瞭で無くなる.すなわち,島弧方向の山列・低地帯と,それに直交する方向の山列とそれらの間の低地帯は,互いに網のように重なり合って相互に影響を与えながらそれぞれの地形を造っている.
地形的に見れば,これら島弧に直交方向の山列は,日本海に対して突き出るかたちをなしている.それは,特に,金峰山-月山-葉山-船形山の山列とその南の烏帽子岳-大鳥屋岳-伊東岳-大朝日岳-大鷹山-二ツ森山の山列で顕著である.
地質的に見ても,これらの山列は日本列島の基盤をなす先第三系花崗岩類が露出するとともに,場合によっては第四系火山の活発な活動が見られる.従って,これらの山列は,第四紀における活発な隆起活動によるものであるということができる.このような隆起活動は,東北日本弧中軸部においては,地震波トモグラフィーによって地下数10km以浅におけるマグマの存在が推定されており(長谷川・中島,2009),直交須流方向の山列もまたマグマの存在に支えられている可能性を持っている.
このようなマグマによって支えられている東北日本弧の地殻の状況は,島弧を横断する方向の地震投影断面において,浅層地震の下限が中軸部を高まりの頂点として両側に緩く深くなっていく様子を見ることができる.さらに,中軸部の周辺では,深さ40km程度から上に向かって棒状に伸びており,低周波地震の存在と相まって,マグマの上昇を表しているとみられる.
今回の2019年山形県沖地震は,規模は大きくないが,このような地形・地質の状況の中で発生した地震として見てみると,金峰山-月山-葉山-船形山の山列とその南の烏帽子岳-大鳥屋岳-伊東岳-大朝日岳-大鷹山-二ツ森山という2つの山列が複合して緩い複合した円弧をなして日本海に突き出る地形をなしている部分の先端部の地下で起こっていると見ることができる.
2019年山形県沖地震が発生した断層面は,陸側に緩く傾いた面をなしていると考えられるが,すなわち,これは,島弧に直交方向の山列をなす隆起部の高まりをなす陸側の地殻が,日本海側の海域の低地に向かって落ち込む部分で,グラビティスプレッディングによって海側の地殻に乗り上げている境界面と見ることができる.
ちなみに,陸側の鶴岡市南部~村上市北部の葡萄山塊には,北東-南西方向の西側に傾斜した正断層が複数発達しており,リストリック断層の形状を持っており.葡萄山塊の日本海側に向かう地滑り的な運動が推定されている.今回の地震は,このような日本海側に地滑り的に移動するブロック群の下面のすべり面で起こった地震である可能性がある.
文献:
長谷川 昭・中島淳一 (2009) 地震波トモグラフィによる東北日本弧の深部構造と造構運動.地球科学,61, 201-210.
気象庁, 2019, 令和元年6月地震・火山月報(防災編).