JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS13] 地震活動

コンビーナ:吉田 康宏(気象庁気象大学校)

[SSS13-P04] 日向灘の地震活動における続発事例

*廣田 伸之1山田 祐子2新原 俊樹2 (1.気象庁、2.福岡管区気象台)

1.はじめに
日向灘では、2019年3月27日にM5.4の地震が数時間の間隔で2回発生した。また、2019年5月10日にM5.6の地震とM6.3の地震が1時間の間隔で発生した。2016年に地震調査研究推進本部において「大地震後の地震活動の見通しに関する情報のあり方」報告書がまとめられ、全国の続発事例が整理されたが、その中には日向灘の続発事例は1つも報告されていない。これは、抽出する条件によって結果が異なることが一因である。同報告書では、規模の大きな地震のみ対象としているが、ここでは、中規模クラスの地震も含めて、日向灘における続発事例についてデータを整理し、その特徴をまとめた。
日向灘は南海トラフ地震想定震源域内で最も地震活動が活発な地域であり、プレート境界の地震の多くは日向灘で発生していることから、その地震活動の監視上、続発事例について詳細に把握しておくことは重要である。
2.続発事例の抽出方法
2.1使用データ
震源データ:気象庁一元化震源
期間:1984年4月1日~2019年9月30日
規模:M3.0以上
2.2抽出方法
(1)余震を除去する
以下の条件に合致する地震は余震として、続発事例抽出の候補から除去する。
・震央距離:Log(L)=0.5M-1.8(Utsu,1961)から得られる断層長L(㎞)以内で発生した地震。
ただし、Utsu(1961)から得られる断層長が10㎞未満になる場合には一律10㎞以内とする。
・期間:M6.0以下の地震は10日以内、M6.0より大きい地震は30日以内に発生した地震。
・Mの差:Mの差0.3以上。
(2)続発事例の抽出
余震を除去した震源に対して、以下の条件に全て合致する地震のペアを続発事例とする。
・震央距離:余震除去の場合と同様。
・期間:1日以内。
・Mの差:2つの地震のペアについて「2つ目の地震のM - 1つ目の地震のM ≧ -0.2」となる場合。
3.続発事例の特徴
続発事例は、日向灘の全域で均等に発生するわけではなく、特定の活動域に固まって発生する傾向が見える。2019年3月27日、2019年5月10日の事例も、続発率の高い場所で発生した。また、これらの事例が発生した場所(続発率の高い場所)では、この他にも、2014年8月29日のM6.0を含む事例、1996年10月19日のM6.9を含む事例等、過去にもM6.0以上の地震を含む事例が発生している(図1)。
続発事例のうち、約70%はフィリピン海プレートと陸のプレートの境界で発生するタイプの発震機構解である。これまでにプレート境界型の発震機構解が決定されている場所と同程度の深さで発生しているものが多い。これらのことから、日向灘の続発事例の多くは、プレート境界で発生している可能性がある。
4.気象庁の業務への活用の検討
本調査結果の気象庁業務への活用の可能性として、以下の2点を検討している。
・地震活動のリアルタイム監視への活用
・地震解説業務の補足資料としての活用
このうち、今回は「地震活動のリアルタイム監視への活用」について報告する。
本調査で得られた日向灘の続発事例は、多くが1日以内に発生している。このため、本調査結果をリアルタイム監視に活用することを考えた場合、「続発する可能性」につて全自動かつリアルタイムにプッシュ通知する仕組みが必要と考える。そこで、一定規模以上の地震が発生した場合に、その地震の付近における過去の続発事例の有無、続発率を全自動かつリアルタイムに通知するツールの開発を行っている。仮に、2019年3月27日、5月10日の地震の時に、今回開発したツールがあれば、1つ目の地震の直後に「この地震の付近では過去に何度も続発した事例があり、日向灘の中でも続発率の高い場所である」ことがわかる。