JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS14] 地殻変動

コンビーナ:落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)、加納 将行(東北大学理学研究科)

[SSS14-11] 2011年東北地方太平洋沖地震前15年間のプレート間カップリングの時空間分布の推定

*阿部 大毅1吉岡 祥一2 (1.神戸大学理学研究科惑星学専攻、2.神戸大学都市安全研究センター)

キーワード:GNSS、プレート間カップリング

東北地方のGEONETの電子基準点で得られた観測データを用いて,プレート運動によるテクトニックな水平・上下変動を求め,インヴァージョン解析により太平洋プレートと北米プレートの間のプレート間カップリングの時空間分布を推定した.その際,長崎県内の電子基準点の福江を参照点とし,北米プレートとアムールプレートの相対プレート運動を考慮した.解析期間は2011年東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)発生前の15年間とした.本研究では,チェビシェフ多項式を用いてテクトニックな変動を高精度で求め,最適の多項式の次数はAICの値が最小になるように求めた.地震時とアンテナ交換に伴うステップを除去した後,水平成分において,余効変動がみられた大地震について,余効変動を対数関数で近似することでその影響を取り除いた.さらに,解析に使用した全観測点の時系列データから求めた共通誤差成分と,年周・半年周成分を取り除くことでテクトニックな変動を抽出した.結果を1年ごとに区切って表示することで,テクトニックな変動の時空間変化を詳しく調べた.その結果,解析期間を通して,岩手県,宮城県の太平洋側の観測点では2cm/年の西向きの水平変位が継続してみられた. 2003年までは約0.5㎝/年の北向きの成分がみられたが, 2004年を境に見られなくなった.上下変位は,太平洋側で沈降,日本海側で隆起という傾向がみられた.また, 2008年1月~2010年12月の期間で西向きの変動が全観測点で大きくなっていることが見出された.時系列データから得られたテクトニックな地殻変動をもとに1年のタイムステップでインヴァージョン解析を行い,東北沖のプレート間の固着状態とすべりの時空間分布を推定した.太平洋プレート上面の形状はNakajima and Hasegawa(2006)を使用した.解析には,すべりの空間分布がなめらかである,すべりは主にプレート収束方向を向く,すべりの時間変化はなめらかであるという3つの先験的情報を与えたインヴァージョン法(Yoshioka et al., 2015)を用いた.これらの最適な超パラメターの値はABIC最小化条件によって推定した(Akaike, 1980).その結果,設定した断層領域内では, 非地震性すべりはほとんどみられず, 固着状態が支配的であることがわかった. 1997年~2010年の期間,東北太平洋沖地震の破壊開始点の周辺では約8 cm/年のプレート間の固着が得られた. また, 2009年から2010年にかけて, 破壊開始点の陸側で固着が約3 cm/年の割合で大きくなっていることが確認できた.