JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS14] 地殻変動

コンビーナ:落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)、加納 将行(東北大学理学研究科)

[SSS14-P03] スロースリップ客観検知手法の応用

*小林 昭夫1 (1.気象庁気象研究所)

キーワード:長期的スロースリップイベント、南海トラフ、GNSS

南海トラフ沿いでは短期的スロースリップイベント(SSE)や長期的SSEなどのスロー地震が発生しており、その分布や規模、発生頻度などを均質的に把握することは、プレート境界の特性の時空間変化に関する理解をもたらすことが期待される。Kobayashi (2017)は南海トラフ沿いの長期的SSEについて、GNSSによる客観的検知手法を開発した。これにより長期的SSEの時空間分布が得られた。ここでは、この手法を応用して発生した長期的SSEのおよその規模推定を試みた。

GEONETのF3解座標値を用い、各点について一次トレンド、アンテナ交換などによるオフセット、地震によるオフセットの補正を行った。次に、長期的SSEの影響がほぼ見られない中国地方の観測点について1日ずつの領域内中央値を求め、各点の座標値から領域内中央値を差し引いた。各点の水平成分からフィリピン海プレートの沈み込みと逆方向の成分を計算し、南海トラフ沿いのプレート等深線25 kmに設定した経度0.1度間隔の地点を中心とする50×100 kmの矩形範囲内の各点の平均値の時系列を得た。この時系列と1年間の傾斜期間を持つランプ関数との相互相関値と1年間の変化量を求めた。一方、プレート等深線25 kmに設定した地点を中心とする30 km×30 kmの矩形断層上で100 mmの逆断層すべり(Mw6.3相当)を与えたときの、同地点を中心とする50×100 kmの矩形範囲内の観測点での理論変位から、フィリピン海プレートの沈み込みと逆方向の成分の理論平均値を計算した。すべりの規模が変化するとき、すべり範囲は固定ですべり量のみ変化すると仮定し、相互相関値0.8以上について1年間変化量と理論平均値との比からすべりの規模を推定した。

長期的SSEの規模は各イベントのピークでMw6.3~6.9に推定され、東海の2000~2005年SSEを除いて個別に解析された規模と概ね一致している。東海2000~2005年については継続期間が長く、この手法では1年あたりの規模推定になるため、差が大きくなったと考えられる。

本調査には国土地理院GEONETの座標値およびオフセット値を使用させていただきました。