JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS14] 地殻変動

コンビーナ:落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)、加納 将行(東北大学理学研究科)

[SSS14-P04] GEONETで検出された2018年6月からの日向灘・豊後水道SSE

*小沢 慎三郎1川畑 亮二1小門 研亮1矢来 博司1 (1.国土交通省国土地理院)

キーワード:スロー地震、日向灘、豊後水道

要旨

GNSS観測により、2018年6月頃から九州・四国域で遷移的な地殻変動が観測された。観測された地殻変動から推定した、プレート境界滑りモデルでは、2018年6月頃から日向灘北部で長期的SSEが発生し、10月頃に収束し、2018年10月頃から豊後水道で長期的SSEが発生し、2019年8月頃に収束した。推定されたモーメントは50x1018Nmに達した。2018-2019年のSSEの滑り過程は、過去の豊後水道域のSSEの滑り過程とかなり異なっている。



はじめに

日向灘北部、豊後水道では5~6年ほどの周期で繰り返し長期的SSEが発生してきた。2016年5月の熊本地震の直前にも、日向灘北部、四国南西部で長期的SSEが発生している。熊本地震の地震時及び地震後の地殻変動のため、日向灘北部及び四国南西部のSSEが熊本地震後に継続したのか停止したのかははっきりしない。そのような中、2018年6月頃から、九州北部で遷移的な地殻変動が発生し、その後2018年10月頃から豊後水道周辺で遷移的な地殻変動が発生している。GNSSで観測された地殻変動のデータから、四国・九州域のプレート間滑りの時空間変化を推定した。



解析手法

GNSSによる、観測点の座標時系列から、2013-2019年間の年周、半年周成分を三角関数の重ね合わせで推定し、元の座標時系列からとり除いた。周期成

分を取り除いた時系列から2017-2018年間の一次トレンドを差し引いている。このようにして得られた東西、南北、上下の座標時系列データを用いて時間依存のインバージョン解析を行った。観測点は四国・九州域の観測点250点を使用した。弘瀬他(2008)によりコンパイルされたフィリピン海プレートの形状をスプライン曲面で表して解析に使用している。グリッド間隔は、凡そ40km程としている。プレート境界面上のすべりの方向は東向き、南向きになるように拘束をかけた。



結果と考察

2018年6月頃から日向灘北部でプレート間滑りが発生し、10月頃に終息している。その後豊後水道域でプレート間滑りが発生し、四国及び日向灘北部に滑り域が拡大し、2019年6月頃に豊後水道の中心域で滑りが小さくなり8月頃にはその周辺域の滑りも終息している。推定された滑り過程は、過去の豊後水道域のSSEの滑り過程と異なっている。特に今回は日向灘北部でSSEが始まり、豊後水道域に滑りが移動し、日向灘北部でまた滑りが発生している。特に2010-2011年に発生した豊後水道域のSSEでは、豊後水道のSSEの終息後に日向灘北部でSSEが発生しており、2018-2019年のSSEの破壊過程とかなり異なる。豊後水道のSSEの発生は前回のSSEから7年ほどで起きており、5-6年周期からするとやや遅れて発生しているようにも見える。また日向灘北部のSSEは2016年の熊本地震前に発生しはじめており、今回の発生はそれから2年後ということになり、さらに今回は短い間隔で2回発生しているように見える。今回の過去とかなり異なる破壊過程、発生周期の変化は熊本地震及びその余効変動による応力変化の影響を受けている可能性がある。