JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS14] 地殻変動

コンビーナ:落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)、加納 将行(東北大学理学研究科)

[SSS14-P13] MCMC法による震源断層モデルの推定について

*川畑 亮二1 (1.国土交通省 国土地理院)

キーワード:地殻変動、逆解析

概要
国土地理院では,大きな地殻変動を伴う地震が発生した際に,地殻変動量から震源断層モデルを推定している.震源断層モデルの推定は,周辺の地殻変動量の面的な把握や以後の余震活動への評価等に必要な情報であるため,信頼性の高いモデルを迅速に構築する必要がある一方,モデルパラメータに対する非線形性や観測点の配点等による観測データの制限のため,一意的に最適解を求めることは困難であることが多い.そこで,本研究では,モデルパラメータを確率的に評価するため,マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法を用いた震源断層モデル推定プログラムを開発した.本プログラムを,いくつかの地震に対して適用した結果を報告する.
計算手法
震源断層モデルとして,半無限均質弾性体中の矩形断層における一様すべり(Okada 1985)を仮定した.観測データには,GEONETの各観測点においてF3解から求めた地震前後における変動量を用いた.逆解析の方法として,MCMC法のうちメトロポリス-ヘイスティングス法によるサンプリングを行い,モデルパラメータの推定を行った.また,パラメータを効率的に収束させるため,パラレルテンパリング法(Sambridge 2013等)を用いた.MCMC法を用いた震源断層モデル推定に関する先行研究では,断層面の方向等一部のパラメータを拘束して推定している場合が多いが(例えばIto et al. 2016,大野・太田2018等),本研究では断層面の方向を含めた全パラメータを推定した.
結果
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震における震源断層モデルの推定では,1枚の矩形断層で推定したところ計算値と観測値に系統的な差が生じたため,2枚の矩形断層を用いて推定を行った.その結果,各モデルパラメータにおいて鋭いピークを持つ周辺事後確率分布が得られた.また,各パラメータの平均値を用いて各観測点における変動量を計算したところ,観測値をよく説明できた.
2019年6月18日山形県沖の地震における震源断層モデルの推定では,南東及び北西に傾き下がる2つの共役な断層面を同時に推定できた.このことは,2つの共役な断層面は双方とも観測量を説明可能なモデルであり,今回使用したGEONETの観測データのみでは,断層面がどの方向に傾き下がっているか特定することは困難であることを示している.