[SSS14-P26] GISを用いた沈み込む海洋プレートの形状解析
キーワード:地理情報システム、最短経路解析、プレート形状、フィリピン海プレート、球殻テクトニクス
日本列島周辺ではプレート境界型地震,内陸地震も含む大陸プレート内地震,および海洋プレート内地震が発生し,これらの地震発生には太平洋プレートとフィリピン海プレートの沈み込みが密接に関連している。沈み込むプレート形状を把握し,島弧の大地形,活構造,地震活動,地質構造などの空間分布との関係を調べることは,島弧全体のテクトニクスを理解する上でも重要である。しかしながら,沈み込む海洋プレートの形状は,これまでには地球物理学的手法(主に地震活動,地震波トモグラフィー,レシーバー関数解析など)で推定されているが,地震活動のない地域ではプレート形状の推定に補間が適用されている可能性があり,プレート形状が正確に捉えられているとは限らない。実際に,西南日本に沈み込むフィリピン海プレートに断裂や重合の存在を指摘している研究も複数ある。そこで本研究では,従来の地球物理的な手法とは別に,プレートの沈み込みを幾何学的に捉え,GISを用いて最短距離および最短経路の解析を行ことにより,プレート形状を評価することを目的とした。
本研究では,まず,プレートの沈み込みを球殻としてとらえることを前提条件として,沈み込み開始地点からの距離を解析する手法を開発した。次に,球殻の組み合わせによって再現した通常の沈み込み,断裂,重合を示す3種のプレート形状に対して適用し,解析手法を検証した。最後に,開発した研究手法を,沈み込むフィリピン海プレートに適用し,断裂や重合といった変形の分布を調べ,地表の活構造の空間分布との比較を行った。なお,本研究では,沈み込んだプレートには伸張や短縮などの変形は生じていないものとして取り扱う。仮に,伸縮を伴う変形が発生した場合は,本研究のプレート解析手法を導入すると,伸張はプレートの断裂として,短縮はプレートの重合として検出されることが期待できる。
研究の結果,まず,GISによる最短距離の解析では,DEMの格子点に沿った距離測定が行われるため,計測開始地点と解析地点の2地点を直接結ぶ距離よりも解析距離が長く算出されることが明らかになった。この影響を,2地点のなす角度と距離の比率(GISの解析距離/2点間を直接結ぶ距離)を求めることで補正し,解析手法に組み込んだ。次に,球殻の組み合わせによって再現したプレートの沈み込みに対して,本研究で開発した解析手法(補正適用済)を適用した。その結果,断裂や重合を示す沈み込みの分布を得ることができた。このことから,本研究で開発した解析手法の有効性が確認できた。最後に,沈み込むフィリピン海プレートの形状について本解析手法を適用し,プレート形状の解析を行った。駿河湾から日向灘にかけての,沈み込むフィリピン海プレートが波状に変形している領域を解析範囲とした。その結果,伊勢湾地域にて重合を,紀伊水道地域にて断裂を確認した。また,プレート形状の解析結果と活断層の分布を比較すると,伊勢湾地域には活断層が密に分布しており,一方,紀伊水道地域には活断層の分布が少ないことが分かった。このことから,プレートが重合し尾根状に沈み込んでいる東海重合部では,南北走向の逆断層が多く分布しており,活動度も高いことから,プレートの重合により東西圧縮のひずみが集中していると推測された。また,紀伊水道断裂部における活断層の分布密度の小ささは,プレートの断裂により地殻に蓄積される歪みが小さいことに起因すると示唆された。他方,今回使用した既存のデータでは,陸域の伊豆半島周辺では沈み込み開始地点が示されていないため,伊豆半島周辺から中部山岳地域周辺にかけての沈み込むプレート形状については解析結果を得ることができなかった。今後,プレート境界に相当する沈み込み開始地点を他のデータを参考にして設定し,プレート形状解析を行うことが課題の1つとして残された。
本研究では,まず,プレートの沈み込みを球殻としてとらえることを前提条件として,沈み込み開始地点からの距離を解析する手法を開発した。次に,球殻の組み合わせによって再現した通常の沈み込み,断裂,重合を示す3種のプレート形状に対して適用し,解析手法を検証した。最後に,開発した研究手法を,沈み込むフィリピン海プレートに適用し,断裂や重合といった変形の分布を調べ,地表の活構造の空間分布との比較を行った。なお,本研究では,沈み込んだプレートには伸張や短縮などの変形は生じていないものとして取り扱う。仮に,伸縮を伴う変形が発生した場合は,本研究のプレート解析手法を導入すると,伸張はプレートの断裂として,短縮はプレートの重合として検出されることが期待できる。
研究の結果,まず,GISによる最短距離の解析では,DEMの格子点に沿った距離測定が行われるため,計測開始地点と解析地点の2地点を直接結ぶ距離よりも解析距離が長く算出されることが明らかになった。この影響を,2地点のなす角度と距離の比率(GISの解析距離/2点間を直接結ぶ距離)を求めることで補正し,解析手法に組み込んだ。次に,球殻の組み合わせによって再現したプレートの沈み込みに対して,本研究で開発した解析手法(補正適用済)を適用した。その結果,断裂や重合を示す沈み込みの分布を得ることができた。このことから,本研究で開発した解析手法の有効性が確認できた。最後に,沈み込むフィリピン海プレートの形状について本解析手法を適用し,プレート形状の解析を行った。駿河湾から日向灘にかけての,沈み込むフィリピン海プレートが波状に変形している領域を解析範囲とした。その結果,伊勢湾地域にて重合を,紀伊水道地域にて断裂を確認した。また,プレート形状の解析結果と活断層の分布を比較すると,伊勢湾地域には活断層が密に分布しており,一方,紀伊水道地域には活断層の分布が少ないことが分かった。このことから,プレートが重合し尾根状に沈み込んでいる東海重合部では,南北走向の逆断層が多く分布しており,活動度も高いことから,プレートの重合により東西圧縮のひずみが集中していると推測された。また,紀伊水道断裂部における活断層の分布密度の小ささは,プレートの断裂により地殻に蓄積される歪みが小さいことに起因すると示唆された。他方,今回使用した既存のデータでは,陸域の伊豆半島周辺では沈み込み開始地点が示されていないため,伊豆半島周辺から中部山岳地域周辺にかけての沈み込むプレート形状については解析結果を得ることができなかった。今後,プレート境界に相当する沈み込み開始地点を他のデータを参考にして設定し,プレート形状解析を行うことが課題の1つとして残された。