JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS14] 地殻変動

コンビーナ:落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)、加納 将行(東北大学理学研究科)

[SSS14-P29] 1946年南海地震前の固着域の変化と四国の上下変動

*梅田 康弘1 (1.元京大防災研,元産総研)

キーワード:1946年南海地震,固着域,上下変動

フィリピン海プレートの運動速度が一定ならば地上で観測される上下変動の速さも一定になるはずだが,それは固着域の幅を不変としているからであって,固着の幅が変われば地表で観測される上下変動の速度も変わる.梅田・板場(2011)は,昭和南海地震前の四国での上下変動図を,地理院と水路局(現在の海上保安庁海洋情報部)の資料を組み合わせて描いた.Fig.1の実線(Obs.)は室戸岬と土佐湾奥の須崎の変動図であるが,1930年の測量以前と以降では,変動勾配が大きく異なっていることがわかる.これを説明するために固着域の変化を考えた.南海トラフにほぼ直行して四国中部を切るプレート境界の断面Fig.2に示した.境界上に3つの固着域F1,F2,F3を設定した.フィリピン海プレートの相対速度を5 cm/年とすると,上盤は100年間に5 m引きずり込まれる.およそ100年間に,以下に述べる4つのステージで滑るとした場合の変動図をFig.1の点線(Cal.)で示した.同図の(a)の期間は,F1,F2,F3すべてが固着している状態で,上盤も5 cm/yで引きずり込まれる場合の変動を示す.(b)の期間にはF1とF3が固着の70 %(3.5 m)と80 %(4.0 m)だけ,それぞれゆっくり滑った時の変動,(c)は地震時でF1のみが一挙に5 m滑った時の変動,(d)は余効変動としてF1とF3の固着の残り30 %(1.5m)と20 %(2.0 m)が滑るとした.このように,3つの固着域が別々に滑ると考えると,四国の上下変動はうまく説明できる.逆に言えば,変動勾配の変化は固着域の幅の変化を表している.梅田康弘・板場智史(2011) 1946年南海地震前の四国太平洋沿岸の上下変動.地質調査研究報告,62,243-257.