[SSS15-16] 開口を許した断層の動的破壊シミュレーション:間隙水圧と地震モーメントの等方成分の生成について
キーワード:動的破壊シミュレーション、等方的成分、間隙水圧
近年、非火山性の地震に関してモーメント解に体積変化を表す等方(ISO)成分を多く持つ震源の存在が示唆されている。例えばStierle et al. (2014)では、1999年に発生したイズミット地震の震源域において、有意(15%以上)なISO成分を持つ余震が捉えられたと報告されている。本研究では、Mode I、IIの混合Modeの動的破壊シミュレーションを行い、顕著なISO成分を持つモーメントテンソルが再現できるかを調べた。
計算には2次元の空間領域における境界積分方程式法を利用した。断層形状を仮定し、初期条件として応力分布を設定し、断層上の各エレメントで滑り速度と応力が相互に関連して時間発展する様子を計算する。区分的に一定値を取る関数で離散化した滑り速度から応力変化を求めるために、Tada & Madariaga (2001)で示されている積分核を利用した。また、時間発展の手法には、Noda & Lapusta (2010)で利用されている予測子-修正子法を利用した。この計算手法の特色は、非平面断層を扱える点、また混合Modeでの計算の安定性がCochard and Madariaga (1994)のものより増したために、剪断方向だけでなく開口方向の変位を持つ破壊を容易に扱える点である。断層構成則には線形滑り弱化摩擦則を用いた。
非平面断層を扱う場合、解析解が知られておりプログラムの検証に利用できる適切な問題が存在しない。開発したプログラムの検証の為に、The SCEC/USGS Spontaneous Rupture Code Verification Project (Harris et al., 2009)を利用した。ベンチマーク問題として定義されているTPV14,15 2-Dを、先述した手法で解いた結果と、他の計算手法で解いた結果(Webページ上で共有されている)を比較した。TPV14,15 2-Dはjunction pointで2枚の断層が斜めに接合した非平面断層を対象とした問題であり、それぞれ右横ずれ断層と左横ずれ断層に対応する。断層上のいくつかの観測点において、滑り速度や応力の時間発展を各手法と比較した結果、時間変化の概形や特徴的なタイミング(破壊がある観測点に到達する時間、滑り速度が最大になる時間など)がおおむね合致していたため、計算プログラムには問題が無いことが確認できた。
混合Modeの動的破壊をシミュレーションする際、平行な2枚の断層(L,R面)が斜交した断層(C面)によって繋がっている形状を想定した。広域応力場を設定するにあたってはAndrews(1976)で定義されているS値に着目した。S値は破壊の進行しにくさを、破壊が生じるために必要な剪断応力の増加と、破壊が生じたときの応力降下量の比で表現したものであり、この値が小さいほど破壊が進行しやすい。差応力を一定に保った場合、S値の減少は間隙水圧の増加として解釈できる。このS値と、断層の斜交する角度(Φ)、C面に対する最大応力軸の角度(Ψ)をそれぞれパラメータとしてパラメータスタディを行った。
パラメータスタディの結果、S値が小さいほど、すなわち間隙水圧が増加するほどISO成分が増える傾向がほぼすべてのケースで見られた。しかし最大応力軸の角度(Ψ)が15°程度の低角なときは、いくら間隙水圧を上げてもISO成分が10%を超えないことが明らかとなった。逆にΨを高角(75°程度)で与えたときは、破壊開始のための応力擾乱を人為的に与えることなく自発的に破壊してしまい、問題設定として適切でない例が多かった。Ψの角度を中程度に設定したとき、最も高いISO成分を得られた。このような結果から、単純に間隙水圧が上昇すれば必ず有意なISO成分を伴う破壊になるのではなく、応力の向きや断層の形状も重要であると考えられる。今後はより多様なパラメータを用いてシミュレーションを行い、開口が生じる条件について明確に示すことを目指す。
計算には2次元の空間領域における境界積分方程式法を利用した。断層形状を仮定し、初期条件として応力分布を設定し、断層上の各エレメントで滑り速度と応力が相互に関連して時間発展する様子を計算する。区分的に一定値を取る関数で離散化した滑り速度から応力変化を求めるために、Tada & Madariaga (2001)で示されている積分核を利用した。また、時間発展の手法には、Noda & Lapusta (2010)で利用されている予測子-修正子法を利用した。この計算手法の特色は、非平面断層を扱える点、また混合Modeでの計算の安定性がCochard and Madariaga (1994)のものより増したために、剪断方向だけでなく開口方向の変位を持つ破壊を容易に扱える点である。断層構成則には線形滑り弱化摩擦則を用いた。
非平面断層を扱う場合、解析解が知られておりプログラムの検証に利用できる適切な問題が存在しない。開発したプログラムの検証の為に、The SCEC/USGS Spontaneous Rupture Code Verification Project (Harris et al., 2009)を利用した。ベンチマーク問題として定義されているTPV14,15 2-Dを、先述した手法で解いた結果と、他の計算手法で解いた結果(Webページ上で共有されている)を比較した。TPV14,15 2-Dはjunction pointで2枚の断層が斜めに接合した非平面断層を対象とした問題であり、それぞれ右横ずれ断層と左横ずれ断層に対応する。断層上のいくつかの観測点において、滑り速度や応力の時間発展を各手法と比較した結果、時間変化の概形や特徴的なタイミング(破壊がある観測点に到達する時間、滑り速度が最大になる時間など)がおおむね合致していたため、計算プログラムには問題が無いことが確認できた。
混合Modeの動的破壊をシミュレーションする際、平行な2枚の断層(L,R面)が斜交した断層(C面)によって繋がっている形状を想定した。広域応力場を設定するにあたってはAndrews(1976)で定義されているS値に着目した。S値は破壊の進行しにくさを、破壊が生じるために必要な剪断応力の増加と、破壊が生じたときの応力降下量の比で表現したものであり、この値が小さいほど破壊が進行しやすい。差応力を一定に保った場合、S値の減少は間隙水圧の増加として解釈できる。このS値と、断層の斜交する角度(Φ)、C面に対する最大応力軸の角度(Ψ)をそれぞれパラメータとしてパラメータスタディを行った。
パラメータスタディの結果、S値が小さいほど、すなわち間隙水圧が増加するほどISO成分が増える傾向がほぼすべてのケースで見られた。しかし最大応力軸の角度(Ψ)が15°程度の低角なときは、いくら間隙水圧を上げてもISO成分が10%を超えないことが明らかとなった。逆にΨを高角(75°程度)で与えたときは、破壊開始のための応力擾乱を人為的に与えることなく自発的に破壊してしまい、問題設定として適切でない例が多かった。Ψの角度を中程度に設定したとき、最も高いISO成分を得られた。このような結果から、単純に間隙水圧が上昇すれば必ず有意なISO成分を伴う破壊になるのではなく、応力の向きや断層の形状も重要であると考えられる。今後はより多様なパラメータを用いてシミュレーションを行い、開口が生じる条件について明確に示すことを目指す。