JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS15] 地震発生の物理・断層のレオロジー

コンビーナ:吉田 圭佑(東北大学理学研究科附属地震噴火予知研究観測センター)、岡崎 啓史(海洋研究開発機構)、金木 俊也(京都大学防災研究所)、野田 博之(京都大学防災研究所)

[SSS15-20] 室内水圧破砕実験において計測された微小破壊の震源パラメタ推定

*直井 誠1今北 啓一1陳 友晴1田中 塁1山本 和畝3川方 裕則2石田 毅1福山 英一1有馬 雄太郎3 (1.京都大学、2.立命館大学、3.独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)

キーワード:Acoustic Emissions、Induced earthquakes、Source parameters、Hydraulic fracturing

シェールガス・オイルを始めとした資源開発において,水圧破砕技術は透水性の低い岩盤を破砕し資源の流路を確保する目的で用いられている.破砕は直接観察が不可能な地下深くで行われ,その影響はしばしば誘発される微小地震を用いてモニタリングされるので,水圧破砕で誘発される微小地震の特性を知ることは重要である.この知見を得ることを目的として室内水圧破砕実験を行い,試験中に生じた微小破壊(Acoustic Emission;AE)を測定すると共に,その地震モーメント・コーナー周波数および応力降下量の推定を実施した.

実験には65x65x130 mmに整形した黒髪島花崗岩およびイーグルフォード頁岩供試体を用い,5 MPaの一軸圧縮下で行った.供試体中央に直径6 mmの破砕孔を穿孔し,1 cc/minのレートで流体を圧入し破砕を実施した.供試体表面に24個のAEセンサを設置して10 Ms/s,14bitで試験中に生じる振動を連続収録し,Naoi et al. (2018; IJRMMS)の手法に準じて,得られた記録から波形切り出し・震源決定・相対震源決定を行いAEのカタログを作成した.また,試験直前にAEセンサから他のすべてのAEセンサに弾性波動を発振する音波透過試験を行い,得られたP波初動振幅を逆解析することで,各センサの相対感度および供試体の減衰特性をすべての実験において評価している.これらのセンサ感度を補正したうえで,個々のAEのP波初動極性及び振幅からモーメントテンソル解析を実施したところ,イーグルフォード頁岩の試験中に得られたAEはほぼすべてが引張破壊(今北2019 地震学会),黒髪島花崗岩の試験では引張とせん断が同程度の割合で発生(Yamamoto et al. 2019 GJI; 田中2019 地震学会)したことが確かめられた.

作成したAEカタログ中の各イベントの絶対規模(地震モーメントMo,モーメントマグニチュードMw)を,理論スペクトルと観測スペクトルをフィッティングすることで評価した.一般にAEセンサの周波数特性は地震計とは異なり複雑で,かつ固定方法によって変化するため,地震モーメント評価などのスペクトルを用いた解析を行なうには,実際の運用時の固定方法における周波数特性を評価・補正する必要がある.今北(2019 地震学会)は,上記実験で採用したセンサの固定方法におけるセンサの周波数特性を,速度に対してフラットな周波数特性を持つレーザードップラー速度計を用いて評価した.得られた周波数特性を用いてAEのMoおよびMwを評価したところ,Mw -8.5から -6.0程度のMwが得られた.これらのサイズ分布は概ねGutenberg Richter則に従うが,花崗岩に対しては,Mw -7.5程度で明瞭な折曲りが確認できる.後述する応力降下量の推定値を仮定すると,これは1–2 mm程度の破壊サイズに対応している.このサイズは同花崗岩の粒径と調和的であり,構成粒子の粒径の影響が,生じるサイズ分布の特徴的スケールとして現れたものと考えられる.

次に,試験中に得られたAEに対して波形の類似性が高いものをグルーピングし,それらに対してスペクトル比法(例えばIde et al. 2003 JGR)を用いてコーナー周波数を推定した.花崗岩供試体で多発したせん断型AEに対して得られたこれらの値から,円形クラックモデルを仮定して応力降下量を評価したところ,0.01MPa –1 MPaの値が得られた.先行研究で繰り返し報告されている地震の典型的応力降下量(例えば, Yoshimatsu et al. 2014)にくらべて1桁低いが,流体が関与する地震に対しては低い応力降下量が報告されていること(例えば,Chen and Shearer 2011 JGR),ならびに本実験は5 MPaという低い応力条件での実験であることから,妥当な結果とみられる.また,イーグルフォード頁岩,黒髪島花崗岩共に,引張型AEに対する解析でも,上記のせん断型とほぼ同じコーナー周波数―地震モーメントの関係が得られた.