JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS15] 地震発生の物理・断層のレオロジー

コンビーナ:吉田 圭佑(東北大学理学研究科附属地震噴火予知研究観測センター)、岡崎 啓史(海洋研究開発機構)、金木 俊也(京都大学防災研究所)、野田 博之(京都大学防災研究所)

[SSS15-21] 近地強震波形記録を用いた2016年大分県中部の地震のCMT解析

*小割 啓史1小松 正直1竹中 博士1岡元 太郎2中村 武史3吉見 雅行4林田 拓己5 (1.岡山大学、2.東京工業大学、3.防災科学技術研究所、4.産業技術総合研究所、5.建築研究所)

キーワード:CMTインバージョン、モーメントテンソル、大分県、近地強震波形記録、3次元地下構造モデル

2016年4月16日1時25分に熊本県を震源とする2016年熊本地震 (MJMA7.3) が発生した.その約32秒後に大分県中部を震源とする地震 (MJMA5.7) を誘発し,由布から別府湾にかけて地震活動が活発化した.我々は先の発表(小割・他,2019,日本地震学会)で,誘発地震の余震と考えられるイベントのうち規模が大きい4イベント:2016年4月16日7時11分 (MJMA5.4) ,同日8時27分(MJMA3.7) ,同日23時26分 (MJMA3.6) ,4月29日15時9分 (MJMA4.5) の近地の強震波形記録に対してCMTインバージョンを行い,セントロイド震央が由布院断層の地表トレース付近に求まったこと,メカニズムの北傾斜の節面と由布院断層の走向が概ね一致することからこれらの4イベントが由布院断層の活動によるものであることを示した.今回の発表で,我々は熊本地震の発生から1ヶ月以内に発生したMJMA3.0以上の地震100イベントのうち,先の4イベントの再解析を含む14イベントを解析したので報告する.これらの地震の近地の記録に対し,3次元地下構造モデルを使用したCMTインバージョンを行い,地震の位置,規模,震源メカニズムを推定する.インバージョンにはFAMT (Okamoto et al., 2017, EPS) の計算コード,グリーン関数の計算には陸上・海底地形を考慮できる3次元差分法の計算コードHOT-FDM (Nakamura et al., 2012, BSSA) を使用した.グリーン関数の計算には,地震基盤以浅は地形と共に,文部科学省委託事業『別府-万年山断層帯 (大分平野-由布院断層東部) における重点的な調査観測』(以下,「重点観測」と呼ぶ)の3次元地盤構造モデル,地震基盤以深は地震調査推進研究推進本部の全国一次地下構造モデル (暫定版) を使用する.本研究で使用した波形データは,防災科学技術研究所の強震観測網 (K-NET,KiK-net) と気象庁の震度観測計で得られた加速度波形記録を積分した速度波形,重点観測で設置された臨時観測点で得られた連続速度波形記録である.計11観測点のうちから波形記録の質や観測点の方位分布を考慮して2~6点 (×3成分) を選択した.バンドパスフィルタの周期帯域は,短周期側のコーナーを4~8秒,長周期側のコーナーを10~30秒とし,使用観測点数と共に地震の規模に依存して選択した.
 結果を図1に示す.セントロイド震源は特に誘発地震の震央と鶴見岳 (活火山) の周辺で浅く求まった.この地域で地震発生層の下限が非常に浅いことと整合的である.断層メカニズムは正断層型もしくは正断層成分を含む横ずれ断層型で,伸張軸が全イベント共通してほぼ南北方向である.誘発地震の発震から約5時間後に誘発地震の震央周辺で発生した2つのイベント:4月16日6時51分29秒 (MJMA3.2) ,4月16日6時51分52秒 (MJMA3.0)の北傾斜の節面の断層面解 (それぞれ走向281度,傾斜38度,すべり角-97度,走向281度,傾斜22度,すべり角-74度) は,Nakamura and Aoi (2017) で推定された誘発地震の断層面解 (走向200度,傾斜30度,すべり角-100度) と似ている.

 謝辞:本研究には防災科学技術研究所,気象庁の記録および,文部科学省科学技術基礎調査等委託事業『別府-万年山断層帯 (大分平野-由布院断層東部) における重点的な調査観測』による臨時観測点の記録を使用しました.