JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS15] 地震発生の物理・断層のレオロジー

コンビーナ:吉田 圭佑(東北大学理学研究科附属地震噴火予知研究観測センター)、岡崎 啓史(海洋研究開発機構)、金木 俊也(京都大学防災研究所)、野田 博之(京都大学防災研究所)

[SSS15-25] 断層面上の不均一な応力降下量と破壊伝播速度に基づく大地震の破壊エネルギーの推定

*プリード ネルソン1 (1.防災科学技術研究所)

キーワード:地震の破壊過程、破壊エネルギー、断層破壊伝播速度、応力降下量

破壊エネルギーは、地震破壊発生、成長および停止を支配する地震の基本的な物理性質です。破壊エネルギー(G)を推定するために最も広く使用されているアプローチは、地震時のエネルギー収支に基づいており、破壊エネルギーは、歪エネルギーと地震波放射エネルギーの差で求められます(通常はG ' 、または「地震学的」破壊エネルギー)。この問題を扱いやすくするには、断層面の変位と応力の単純な平均の使用や断層せん断応力とすべりの単純な関係(すべり弱化)の仮定など、いくつかの単純化を想定する必要があります。しかし、断層面のすべりと応力(すなわち、断層破壊過程)は、大きな地震に対して非常に不均質になる可能性があります。
本研究で破壊エネルギーを推定するために、LEFM(線形弾性破壊力学)のアプローチを使用し、不均質な断層破壊は、Anti-planeおよびIn-planeの断層破壊モードの重ね合わせとしてほぼ記述することができると仮定します。 そして、断層面上の局所破壊エネルギーをStress Intensity係数, K *(局所応力降下量とクラークの長さの平方根に比例)に断層の局所破壊伝播速度の関数をかけて計算します。総破壊エネルギーは、断層面全体にわたる局所破壊エネルギーの積分として推定されます。
USGSの国立地震情報センターが作成した広範な地震滑りモデルのデータベースを使用して、世界中の173の地震(Mw>7.0)の破壊エネルギー(G)を推定しました。まず、データベースで利用可能な滑り分布とサブフォールト破壊時間を使用して、応力降下量分布と局所破壊速度分布(Pulido and Dalguer、2009)を計算します。その結果は、応力降下量と局所的な断層破壊速度が不均一な分布を示しています。本研究によると大きな地震では滑りの増加とともに断層の破壊エネルギ(G)が大幅に弱まることを示しています。このGの弱化は、小地震で報告されたものよりも大幅に強くなります(小地震ではGは滑りの平方に比例します)。さらに、本研究ではG’が大地震の破壊エネルギーを系統的に過小評価していることを示しました。