JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS15] 地震発生の物理・断層のレオロジー

コンビーナ:吉田 圭佑(東北大学理学研究科附属地震噴火予知研究観測センター)、岡崎 啓史(海洋研究開発機構)、金木 俊也(京都大学防災研究所)、野田 博之(京都大学防災研究所)

[SSS15-P24] 2016年ニュージーランドカイコウラ地震の震源域における応力場(4)

*松野 弥愛1岡田 知己1松本 聡2河村 優太2飯尾 能久3佐藤 将1中山 貴史1平原 聡1Bannister Stephen4Ristau John4Savage Martha5Thurber Clifford6Sibson Rick7 (1.東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究観測センター、2.九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター、3.京都大学防災研究所、4.GNS Science, Lower Hutt, New Zealand、5.Victoria University of Wellington, Wellington, New Zealand、6.University of Wisconsin, Madison、7.University of Otago, Dunedin, New Zealand )

本研究はニュージーランドの南島北部で発生した2016年カイコウラ地震における、応力場の変化を対象としている。定常観測網のGeonetと臨時観測網の地震波形データを用いてメカニズム解を求め、応力テンソルインバージョンを用いて本震前後の時空間的応力場を求めた。本震断層面上で余震が多く起きている場合、断層面が偏りを持って分布してしまう可能性があるため、本震断層面上で発生した余震メカニズム解の影響を検討する必要がある。そこで、Hamling et al. (2017)の断層モデルとKagan角を用いて、本震断層面上のメカニズム解を取り除くことを試みた。

結果として、Kagan角の値に依らず、応力場は大きく変わらなかったため、本震断層面上で起きている余震が結果に与える影響は小さいと考えられる。さらに、震源地域を細かく複数の領域に分けて応力テンソルインバージョンを行った。その結果、以下のことが分かった。1) 震源地域南西部では横ずれ断層型の応力場から横ずれ断層型と逆断層型の中間的な応力場に変化した。本震前後で応力比(phi)はおよそ0.4から0.2に変化した。2) 中央部では横ずれ断層型と逆断層型の中間的な応力場から横ずれ断層型の応力場へ変化した。本震前後で応力比はおよそ0.2から0.5に変化した。3) 北東部ではより安定した横ずれ断層型へと変化した。本震前後で応力比はおよそ0.2から0.4に変化した。4) さらに、本震後においてより細かく領域を分割し、応力場を求めた結果、断層モデルにおいて走向が変化する継ぎ目付近の地域において、応力場の解が不安定になる傾向が見られた。また、応力場の解が不安定になる地域において応力比が0-0.3の間の値を取ることが多かった。
応力場の解が不安定で、応力比が低い場合に考えられる可能性として、間隙流体圧の影響と本震に依る応力の不均質化の2つが考えられる。後者については、断層モデルが比較的複雑な震源域南西部の地震後や断層モデルの継ぎ目の地域で確認されている。Hamling et al. (2017) の断層モデルで示されているように各小断層での走向や滑り角が一様ではないため、不均一な滑りの影響が現れている可能性もある。今後は深さ方向における応力変化も確認する。さらに、求めた応力場とSlip tendencyを用いることで、断層の動きやすさを定量的に求めていく予定である。