[SSS15-P25] 日本海東縁地域の応力場と発生した地震の断層面との関係
キーワード:日本海東縁変動帯、slip tendency、応力場
Introduction
2019年6月18日に発生した山形県沖地震(Mjma6.7)は日本海東縁変動帯(EMJS帯)の中に位置する.EMJS帯では多数の活断層や褶曲構造が海岸に並行して存在し,多数の大地震が発生している(Okamura, 2010).EMJS帯および東北日本においては応力場や活断層の分布について多くの研究が行われており,概ね東西方向の最大圧縮軸を持つ逆断層型の応力場により逆断層運動が生じていると考えられている(e.g., Terakawa and Matsu’ura, 2009; Okamura, 2019).本研究ではEMJS帯における応力場について新しい時間枠で確認を行った.また,EMJS帯内における2つの巨大地震である山形県沖地震(2019/6/18)と新潟地震(1964/6/12,Mjma7.5)に注目し,応力場との関係性について調査を行った.
Data and methods
本研究ではNIED(国立研究開発法人防災科学技術研究所)F-netとOkada et al. (SSJ meeting, 2019)のメカニズム解データを使用した.応力場の推定手法は,応力テンソルインバージョンSATSI (Spatial And Temporal Stress Inversion)法(Hardebeck and Michael, 2006)を用いた.断層面との関係についてはslip tendency analys (Morris et al.,1996)を用いた.
Results
EMJS帯及び東北日本西岸部
EMJS帯を含む37°N-42°N,137°E-141°Eを調査地域として設定し,1997/1/1-2019/12/31の期間に発生した地震のメカニズム解の分布を確認した.結果,メカニズム解のP軸方向の変化が見られ,約40°N(深さ10-20kmにおいては約39°N)を境界に南部では北西-南東方向,北部では東西方向となった.また,領域の北部(40°N-41°N付近)においては横ずれ型のメカニズム解が増加する傾向が見られた.日本海下と陸域内で比較すると日本海下ではP軸が北西-南東方向であるのに対し,陸域内では東西寄りの方向となる傾向が見られた.次に調査地域において2°×2°毎に応力テンソルインバージョンを行った.結果,南部から北部にかけて最大圧縮応力軸の方向が北西-南東方向から東西方向へ変化する傾向が見られた.また,日本海下から陸域内に向かうにつれ最大圧縮応力軸が徐々に北西-南東方向から東西方向寄りとなった.メカニズム解の分布の変化は,応力軸方向の変化を反映したものと考えられる.
Slip Tendency
山形県沖地震を対象として,断層面とその周辺の応力場の関係についてslip tendencyを用いて調査を行った.山形県沖地震の本震・余震の断層面については,NIEDの本震のメカニズム解を使用した.応力場の推定については,NIEDのメカニズム解およびOkada et al. (SSJ meeting, 2019)によるデータを使用した.結果,本震時については東に傾き下がる節面が高いslip tendencyを示した.また,余震の断層面についても傾斜が緩い節面のほうが高いslip tendencyを持つ傾向が見られた.次に新潟地震を対象とした.本震の断層面についてはHirasawa(1965)の推定結果を使用した.応力場の推定についてはNIEDのメカニズム解データを使用した.結果,2つの節面に対し,東落ちの節面が高いslip tendencyを示した.以上の結果は,山形県沖地震および新潟地震は日本海生成時の引張応力場により生成した高角正断層の再活動ではなく,現在の圧縮応力場によって生成した低角逆断層が活動したものであるとする考えに整合すると考えられる.
References
Hardebeck, J. L., and A. J. Michael, 2006, J. Geophys. Res., 111, B11310.
Hirasawa, T., 1965, J. Phys. Earth,13, 35-66.
Morris, A., D. A. Ferril, D. B. Henderson, 1996, Geology 24, 275-278.
Okamura, Y., 2010, Jour. Geol. Soc. Japan, 116, 582-59.
Okamura, Y., 2019, Jour. Seismol. Soc. Japan, Ser. 2, 46, 413-423.
Terakawa, T., and M. Matsu’ura, 2010, Tectonics, 29, TC6008.
2019年6月18日に発生した山形県沖地震(Mjma6.7)は日本海東縁変動帯(EMJS帯)の中に位置する.EMJS帯では多数の活断層や褶曲構造が海岸に並行して存在し,多数の大地震が発生している(Okamura, 2010).EMJS帯および東北日本においては応力場や活断層の分布について多くの研究が行われており,概ね東西方向の最大圧縮軸を持つ逆断層型の応力場により逆断層運動が生じていると考えられている(e.g., Terakawa and Matsu’ura, 2009; Okamura, 2019).本研究ではEMJS帯における応力場について新しい時間枠で確認を行った.また,EMJS帯内における2つの巨大地震である山形県沖地震(2019/6/18)と新潟地震(1964/6/12,Mjma7.5)に注目し,応力場との関係性について調査を行った.
Data and methods
本研究ではNIED(国立研究開発法人防災科学技術研究所)F-netとOkada et al. (SSJ meeting, 2019)のメカニズム解データを使用した.応力場の推定手法は,応力テンソルインバージョンSATSI (Spatial And Temporal Stress Inversion)法(Hardebeck and Michael, 2006)を用いた.断層面との関係についてはslip tendency analys (Morris et al.,1996)を用いた.
Results
EMJS帯及び東北日本西岸部
EMJS帯を含む37°N-42°N,137°E-141°Eを調査地域として設定し,1997/1/1-2019/12/31の期間に発生した地震のメカニズム解の分布を確認した.結果,メカニズム解のP軸方向の変化が見られ,約40°N(深さ10-20kmにおいては約39°N)を境界に南部では北西-南東方向,北部では東西方向となった.また,領域の北部(40°N-41°N付近)においては横ずれ型のメカニズム解が増加する傾向が見られた.日本海下と陸域内で比較すると日本海下ではP軸が北西-南東方向であるのに対し,陸域内では東西寄りの方向となる傾向が見られた.次に調査地域において2°×2°毎に応力テンソルインバージョンを行った.結果,南部から北部にかけて最大圧縮応力軸の方向が北西-南東方向から東西方向へ変化する傾向が見られた.また,日本海下から陸域内に向かうにつれ最大圧縮応力軸が徐々に北西-南東方向から東西方向寄りとなった.メカニズム解の分布の変化は,応力軸方向の変化を反映したものと考えられる.
Slip Tendency
山形県沖地震を対象として,断層面とその周辺の応力場の関係についてslip tendencyを用いて調査を行った.山形県沖地震の本震・余震の断層面については,NIEDの本震のメカニズム解を使用した.応力場の推定については,NIEDのメカニズム解およびOkada et al. (SSJ meeting, 2019)によるデータを使用した.結果,本震時については東に傾き下がる節面が高いslip tendencyを示した.また,余震の断層面についても傾斜が緩い節面のほうが高いslip tendencyを持つ傾向が見られた.次に新潟地震を対象とした.本震の断層面についてはHirasawa(1965)の推定結果を使用した.応力場の推定についてはNIEDのメカニズム解データを使用した.結果,2つの節面に対し,東落ちの節面が高いslip tendencyを示した.以上の結果は,山形県沖地震および新潟地震は日本海生成時の引張応力場により生成した高角正断層の再活動ではなく,現在の圧縮応力場によって生成した低角逆断層が活動したものであるとする考えに整合すると考えられる.
References
Hardebeck, J. L., and A. J. Michael, 2006, J. Geophys. Res., 111, B11310.
Hirasawa, T., 1965, J. Phys. Earth,13, 35-66.
Morris, A., D. A. Ferril, D. B. Henderson, 1996, Geology 24, 275-278.
Okamura, Y., 2010, Jour. Geol. Soc. Japan, 116, 582-59.
Okamura, Y., 2019, Jour. Seismol. Soc. Japan, Ser. 2, 46, 413-423.
Terakawa, T., and M. Matsu’ura, 2010, Tectonics, 29, TC6008.