[SSS16-10] 清正公道に沿う2016年地震断層と地震被害
キーワード:地震断層、地震被害、強震動、清正公道、2016年熊本地震
1 はじめに
2016年熊本地震時に、清正公道に沿って亀裂等の多数の地変が生じた。これらの地変は、いずれの地点においても右ずれ変位が確認されたことから、地震断層の可能性が高いと思われた。清正公道に沿っては地震被害も顕著であり、地震被害と地震断層との関係が注目された。しかし、埋め立てられた清正公道に沿って地変が生じたことから、これらの地変は埋め土の側方移動などによって生じた可能性もあった。2016年に発生した地変の性情を明確にするため、2019年1月と11月に、清正公道・新小屋地区においてピット調査を実施した。本報告では、主に11月に実施した調査結果を報告し、2016年に地震断層が生じたことを示す。調査には平成30年度科学研究費補助金「熊本地震から学ぶ活断層ハザードと防災教育-活断層防災額の構築を目指して」(課題番号:16H03601、研究代表者:鈴木康弘)を使用した。
2 掘削調査結果
清正公道の新小屋消防団倉庫に隣接する駐車場において、ピットを掘削した。この地域では、最大約10 cmの南上がりの鉛直変位と数cm程度の右ずれ変位のほか、明瞭な杉型雁行亀裂が確認されている。掘削したピットの長さ・幅・深さは、ともに約2 mである。トレンチ壁面には、上位から、人工層、上位の黒土層(約30 cm)、アカホヤ火山灰を含む褐色火山灰層(約50 cm)、下位の黒土層(約30 cm)、暗褐色の火山灰層(20 cm以上)が確認できた。また、清正公道を埋めた人工層も確認できた。下位の黒土層の14C年代測定値は、14,150±40 BP(Beta-550878)であった。
地表で確認できた地変は、清正公道を埋め立てた人工層の中ではなく、地山(黒土層と火山灰層)の中に連続している。断層面がやや不明瞭となる部分もあるが、最下位の暗褐色火山灰層の中では明瞭に認識できる。ピット底面付近での観察によって、大きな開口割れ目や、走向ほぼ東西で鉛直の断層面(主断層)を確認できた。これ以外にも多数の断層構造があったが、それらの収斂状況から見ても、主断層は右ずれ変位を主体とする断層であると判断できる。ピット底面のでは、上方(下位の黒土層)へ連続しない断層も確認できた。したがって、少なくとも2回の活動履歴があると推定される。
3 考察
2016年熊本地震時に清正公道に沿って発生した地変は、埋め土の側方流動等によって二次的に発生したものではない。これらの地変は、明瞭な右ずれ変位を主体とする、地震断層であることが明らかになった。これを、清正公道断層と呼ぶ。
周辺地域と比較して、清正公道に沿っては細い帯状の地域に大きな地震被害が集中している。たとえば、清正公道にある墓地では、その南北の墓地より激しい被害があり、墓石の台座までが倒壊するような非常に強い揺れがあったことがわかる。また、大津町の家屋被害図によると、とくに古い家屋が多いわけではないにもかかわらず、清正公道に沿って全壊・大規模半壊が目立つ。清正公道碑は4本のボルトで固定されていたにもかかわらず、石碑は北方向に倒壊した。その他、埋設された石柱が飛び出した例もあった。
清正公道断層は、布田川-日奈久断層の活動にともなって、付随的に活動した地震断層であると考えられる。それでも、2016年熊本地震時には、清正公道断層に沿って地震被害が集中した。このような被害分布は、強震動が地殻の深部で発生しているという考え方とは全く調和していない。清正公道断層のような副次的な地震断層であっても、地表に極めて近い(浅い)部分で強震動が発生したと考えざるを得ない。今後、このような被害分布特性について、慎重に検討してゆく必要があると考えられる。
2016年熊本地震時に、清正公道に沿って亀裂等の多数の地変が生じた。これらの地変は、いずれの地点においても右ずれ変位が確認されたことから、地震断層の可能性が高いと思われた。清正公道に沿っては地震被害も顕著であり、地震被害と地震断層との関係が注目された。しかし、埋め立てられた清正公道に沿って地変が生じたことから、これらの地変は埋め土の側方移動などによって生じた可能性もあった。2016年に発生した地変の性情を明確にするため、2019年1月と11月に、清正公道・新小屋地区においてピット調査を実施した。本報告では、主に11月に実施した調査結果を報告し、2016年に地震断層が生じたことを示す。調査には平成30年度科学研究費補助金「熊本地震から学ぶ活断層ハザードと防災教育-活断層防災額の構築を目指して」(課題番号:16H03601、研究代表者:鈴木康弘)を使用した。
2 掘削調査結果
清正公道の新小屋消防団倉庫に隣接する駐車場において、ピットを掘削した。この地域では、最大約10 cmの南上がりの鉛直変位と数cm程度の右ずれ変位のほか、明瞭な杉型雁行亀裂が確認されている。掘削したピットの長さ・幅・深さは、ともに約2 mである。トレンチ壁面には、上位から、人工層、上位の黒土層(約30 cm)、アカホヤ火山灰を含む褐色火山灰層(約50 cm)、下位の黒土層(約30 cm)、暗褐色の火山灰層(20 cm以上)が確認できた。また、清正公道を埋めた人工層も確認できた。下位の黒土層の14C年代測定値は、14,150±40 BP(Beta-550878)であった。
地表で確認できた地変は、清正公道を埋め立てた人工層の中ではなく、地山(黒土層と火山灰層)の中に連続している。断層面がやや不明瞭となる部分もあるが、最下位の暗褐色火山灰層の中では明瞭に認識できる。ピット底面付近での観察によって、大きな開口割れ目や、走向ほぼ東西で鉛直の断層面(主断層)を確認できた。これ以外にも多数の断層構造があったが、それらの収斂状況から見ても、主断層は右ずれ変位を主体とする断層であると判断できる。ピット底面のでは、上方(下位の黒土層)へ連続しない断層も確認できた。したがって、少なくとも2回の活動履歴があると推定される。
3 考察
2016年熊本地震時に清正公道に沿って発生した地変は、埋め土の側方流動等によって二次的に発生したものではない。これらの地変は、明瞭な右ずれ変位を主体とする、地震断層であることが明らかになった。これを、清正公道断層と呼ぶ。
周辺地域と比較して、清正公道に沿っては細い帯状の地域に大きな地震被害が集中している。たとえば、清正公道にある墓地では、その南北の墓地より激しい被害があり、墓石の台座までが倒壊するような非常に強い揺れがあったことがわかる。また、大津町の家屋被害図によると、とくに古い家屋が多いわけではないにもかかわらず、清正公道に沿って全壊・大規模半壊が目立つ。清正公道碑は4本のボルトで固定されていたにもかかわらず、石碑は北方向に倒壊した。その他、埋設された石柱が飛び出した例もあった。
清正公道断層は、布田川-日奈久断層の活動にともなって、付随的に活動した地震断層であると考えられる。それでも、2016年熊本地震時には、清正公道断層に沿って地震被害が集中した。このような被害分布は、強震動が地殻の深部で発生しているという考え方とは全く調和していない。清正公道断層のような副次的な地震断層であっても、地表に極めて近い(浅い)部分で強震動が発生したと考えざるを得ない。今後、このような被害分布特性について、慎重に検討してゆく必要があると考えられる。