JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS16] 活断層と古地震

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、近藤 久雄(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、大上 隆史(産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、佐藤 善輝(産業技術総合研究所 地質情報研究部門 平野地質研究グループ)

[SSS16-P13] Lバンド干渉SARでみいだされたお付き合い地震断層

*藤原 智1中埜 貴元1森下 遊1 (1.国土交通省 国土地理院)

キーワード:お付き合い地震断層、熊本地震、干渉SAR、活断層

大地震時のLバンドSAR衛星によるSAR干渉画像は、本震による地殻の弾性変形を捉えている。しかし、震源断層の動きでは説明できない多数の複雑な表面変位も捉えている。筆者らは、SAR干渉画像を用いて、大地震がトリガーとなった表面近くの断層運動と考えられる地表変位のリニアメントを数多く抽出してきた。これらのリニアメントには、震源断層やその分岐断層の浅部への延長による変位も含まれるものの、そのほとんどは震源から離れて位置し、震源断層に直接つながっていない「お付き合い地震断層」と見なされる。

これらのお付き合い地震断層は、本震時に大きな地震動が発生した証拠は見いだされておらず、多くは将来大地震を引き起こす可能性は低いと考えられる。しかし、過去にマグニチュード7クラスの地震を引き起こした活断層(有馬-高槻断層帯)が、2018年の大阪府北部地震というマグニチュード6クラスの地震に誘発される形でお付き合い地震断層となったことがわかっており、多様な運動態をもつようである。

大規模な地震に誘発されたお付き合い地震断層の出現は、1995年兵庫県南部地震、1998年岩手県内陸北部地震、2007年中越沖地震、2011年福島県浜通り地震、2016年熊本地震、2018年北海道胆振東部地震等で見出されており、大地震に伴って発生する一般的な現象である。しかし、その断層運動を引き起こした原動力はさまざまであり、ここにも多様性がある。例えば、2016年熊本地震では、本震によって引き起こされた静的なひずみとお付き合い地震断層の動きが一致する場所があり、本震が直接お付き合い断層を動かしたと考えられる。しかし、熊本地震の別の地域では、2つの動きが一致せず、本震は単なるトリガーにすぎず、過去から長期間にわたって蓄積されたひずみを解放したと考えられるお付き合い地震断層も存在した。

これらから、次の仮説が考えられる。お付き合い地震断層の動きは大地震をトリガーとして誘発される傾向がある。このとき、お付き合い地震断層は、断層運動を引き起こすことによりそれまでに蓄積したひずみもしくは本震によって生成された新たなひずみを解放し、地表に線状の変位を形成する。このような断層運動は、動きやすい脆弱な断層面を形成することになり、将来同じ場所で繰り返し断層変位を引き起こすことになる。