JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS17] 地震全般

コンビーナ:大林 政行(独立行政法人海洋研究開発機構 火山・地球内部研究センター)、中東 和夫(東京海洋大学)、落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)

[SSS17-02] 光ファイバーセンシング技術を用いた天竜船明観測点でのDAS試験観測

*田中 昌之1小林 昭夫1勝間田 明男1木村 恒久2久保田 俊輔3依田 幸英4 (1.気象研究所、2.シュルンベルジェ、3.有限会社ワイケー技研、4.日本電気株式会社)

キーワード:DAS、光ファイバー、振幅線形性

近年、敷設されているシングルモードの光ファイバーケーブルを使い、分布型音響センシング(DAS; Distributed Acoustic Sensing)の技術を用いた地震観測が行われているが、どのメーカーもコヒーレント光時間領域反射測定法の技術がベースになっているようである。光ファイバーの一端から非常にコヒーレントな短波長の光パルスをコア部分に入射すると、コア内に存在する多くの分子レベルの不純物や欠陥で散乱し、入射端に戻ってくる非常に小さいレベルの後方散乱光が発生する。戻り光は、入射端から後方散乱光が発生した場所までの距離を往復するのに相当する時間遅れを持っており、連続的に等間隔で入射することにより、地震や騒音、温度などの外乱によって引き起こされた、ファイバー内のピコストレインレベルの時間変化を細かい地点で観測することができる。光強度は物理量を反映し、時間軸は光速度で換算することで入射端からの距離になる。

DASの特徴としては、①一度の測定でファイバー全域にわたる一次元の分布計測が可能である。②光ファイバーに入射する光パルス幅により決まる距離応答性があり、光パルス幅より狭い範囲の変化は、平均化された値で観測されるため、点の計測は困難である。③ファイバー内の不純物や欠陥に当たり発生する散乱光は微弱な光であり、ノイズ低減のために加算平均等の処理が行われている。④サンプリング周波数により決まる距離分解能がある。⑤ファイバーの伝送損失により、より遠方の散乱光の信号強度は装置の近傍よりも弱くなり、最大測定可能距離は存在し、かつより遠方ほど測定精度が劣る。等がある。長距離のファイバーが用意されていれば、アレイ観測が容易に実現できる。しかしながら、DASで観測されるデータの物理量は、地震計で得られる物理量とは異なるひずみ速度で、かつある区間の平均化された値である。

そこで、振動強度に対して線形性を有しているかなどを調査するため、静岡県浜松市天竜区船明地区にある延長約900mのトンネル内の天竜船明観測点にて試験観測を実施する。シングルモード4芯1kmの光ファイバーを使い、両端の4芯それぞれにAPC研磨のFCコネクタが付いている。観測では、両端ともアダプタを使ってコネクタ同士を接続し、トンネル内を2往復総延長4kmの光ファイバーにする。光ファイバーはトンネル内を地上に敷く、埋設、FEP管に通す等の方法で設置する。自然地震の他に人工的な振動を発生させる。光ファイバーの近くに短周期地震計等を設置する。同じ試験観測を複数の装置で試みる。

会場で結果を紹介する。