JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS17] 地震全般

コンビーナ:大林 政行(独立行政法人海洋研究開発機構 火山・地球内部研究センター)、中東 和夫(東京海洋大学)、落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)

[SSS17-P08] 地表の観測記録から平面波入射を仮定しないで地中の地震動分布を求める方法の検討

*渡邉 禎貢1竹中 博士1小松 正直1大島 光貴2中村 武史3 (1.岡山大学、2.清水建設、3.防災科学技術研究所)

キーワード:地震動、平面波、強震動、地中波動場

地震に対する建物の応答や地盤の安定性を調べるとき、地表のある一点における地震動から地中の入射波動分布を求める必要がある。従来、地表の地震動を平面波の鉛直入射を仮定して、一次元波動論により地中の任意の地点(地中評価点)における入射波動を求めることがしばしば行われている。しかしこの方法では、地震動の上下動成分、水平動成分がそれぞれP波、S波として伝播する。また求められた地中評価点における入射波動が、同じ深さレベルにおいては地点に依らず等しくなる。これでは適切な地中の入射波動分布を求めているとは言い難い。そこで我々は先の発表(竹中・他, 2019年度地震学会秋季大会)で、平面波入射を仮定しない、地表の地震動から地中評価点における入射波を算出する以下の方法を提案した。まず震源を含んだ水平成層構造モデルを用意し、地表の観測記録がある地点の地震動(理論波形)と地中評価点における理論入射波形を計算する。そして地中の理論入射波形を地表の地震動(理論波形)でデコンヴォリューションして、得られた伝達関数を地表の観測記録とコンヴォリューションすることで地中評価点における入射波を求める。ここで、地中評価点における理論入射波形の代わりに地震動(理論波形)を用いれば、同じ点における地震動を算出できる(Fig. 1)。

本研究では、上記の新手法を地表と地中の観測記録がある実地震動記録に適用し、地中の地震動分布を算出した。それを地中の観測記録や平面波の鉛直入射を仮定する従来の方法により算出した地震動と比較することにより、新手法の有用性を調べた。鳥取県西部及び中部で発生した地震のKiK-net観測点における地表の観測記録に適用すると、算出した波形は地中の実際の観測記録をよく再現できた。Fig. 2は深さ100mにおける観測点SMNH01(伯太)の地表の観測記録に適用した例である。地中評価点の位置を地表観測点の位置から水平方向に1 km離した地点に置き、算出した地中の地震動と従来の方法により算出した地震動を比較した。緑線は従来の方法により算出した波形、赤線が提案する方法により算出した波形を示す。両波形には位相の違いが明瞭にみられる。また、地中評価点を観測点真下の深いところに置いた場合は両波形の位相と振幅ともに異なった。これは従来の方法では、斜め入射の効果を考慮できないためである。また提案する方法は震源の位置やメカニズム並びに地中評価点以深の深部構造モデルに対してロバストであり、地中評価点以浅の浅部構造モデルに対して敏感であることがわかった。これらの結果から、提案する方法の精度には地表の観測点がある地点と地中評価点の間における浅部構造モデルが重要であることがわかる。発表では、浅部構造モデルの違いと算出する地震動の関係性や周波数領域におけるスペクトルについても考察する。