[SSS17-P09] 雲仙火山極浅部の内裂地震
キーワード:雲仙火山、内裂地震、火山性地震、比抵抗構造、クロージングクラック、溶岩ドーム
雲仙火山は1990年に198年ぶりに噴火し,普賢岳溶岩ドームの東側に平成新山溶岩ドームを形成した.1995年に一連の噴火活動は停止し,それ以降,火山性地震は比較的少ない傾向を示していたが,2010年頃から徐々に普賢岳・平成新山直下の浅部において発生回数が増加するようになった(気象庁火山活動解説資料).この中で特に注目すべき点は2017年2月より,普賢岳・平成新山周辺において海水準より浅部で発生する地震が散発的に発生し始めた点である.気象庁によると海水準より浅部で発生する地震は2018年度が6イベント,2019年度は6月までに4イベントが報告されている(気象庁火山活動解説資料).この浅い地震の初動極性は,気象庁や九州大学の定常観測点のデータを見ると引き波で始まっている.このような非ダブルカップル型の地震は他の地域においても稀に発生しており,浅間山(Imai 1982)火口直下の深さ500〜1500 mやアイスランドのクラプラ火山(Mildon et al., 2016)の深さ2 kmにおいて観測されており,クラプラ火山においては流体を含む空隙が潰れることが原因として推定されている.
本研究では2018年8月から2019年6月の期間において発生した雲仙火山浅部の地震を解析した.震源の決定精度をあげるために,臨時地震観測点12点(オフライン上下動成分地震計)を2018年8月から雲仙普賢岳周辺の2 km x 2 kmの範囲に設置した.2019年4月にはさらに臨時地震観測点2点(オフライン3成分地震計)を平成新山に増設した.また地震に対する流体の寄与を調べるため,2018年10月〜11月に普賢岳–平成新山周辺領域において広帯域MT観測(電位差2成分を12観測点,MT観測を2地点)を実施した.臨時観測期間中に得られた極浅部地震の波形は,P波初動から数秒は比較的短周期であるがコーダ部分は長周期であり,地震の継続時間は20〜40秒間続くという特徴がある.また,極浅部地震はしばしば連発して発生することがわかった.さらに,極浅部地震は多くの観測点で引きの初動極性が卓越するが,いくつかの観測点では初動極性が押しであることが判明した.臨時地震観測のデータと定常観測網のデータを合わせて震源決定を行った結果,極浅部地震は平成新山直下の深さ約200 mで発生していることが明らかになった.震源は噴火前から存在している地山(普賢岳溶岩ドーム)と噴火後に噴出した平成新山溶岩ドームとの境界に沿うように分布し,1例を除いて平成新山溶岩ドームの噴出源である地獄跡火口付近に位置することがわかった.広帯域MT観測の結果からは,噴火前から存在している地山(普賢岳溶岩ドーム)は高比抵抗領域としてイメージングされる一方で,その上部に平成新山溶岩ドームに対応するやや低比抵抗な領域がイメージングされた.浅部地震の初動の極性分布を説明するために,closing crackとshearの同時発生を仮定した手法(Shimizu et al., 1987; Vaclav Varycuk, 2001; 林田他, 2019, JpGU)や体積変化を仮定したCLVDモデルを適用した結果,地震のT軸をある程度拘束することでき,その向きはイベントごとに異なることがわかった.
極浅部地震はその震源分布と引き波が卓越することから,地山(普賢岳溶岩ドーム)と平成新山溶岩ドームの境界付近に位置する空隙の収縮が原因であると考えられる.しかし,比抵抗構造の結果から,極浅部地震の直下の地山(普賢岳)は高比抵抗であり,大規模な熱水系を構成するクラックなどの空隙が潰れることが極浅部地震の原因とは考えにくい.また,T軸の向きが一定の方向を示していない事実もあわせて,極浅部地震は,普賢岳と平成新山溶岩ドームの境界付近,特に地獄跡火口付近に多く存在する,ランダムな向きを持つ微小な空隙が潰れることによって発生していると考えられる.
本研究では2018年8月から2019年6月の期間において発生した雲仙火山浅部の地震を解析した.震源の決定精度をあげるために,臨時地震観測点12点(オフライン上下動成分地震計)を2018年8月から雲仙普賢岳周辺の2 km x 2 kmの範囲に設置した.2019年4月にはさらに臨時地震観測点2点(オフライン3成分地震計)を平成新山に増設した.また地震に対する流体の寄与を調べるため,2018年10月〜11月に普賢岳–平成新山周辺領域において広帯域MT観測(電位差2成分を12観測点,MT観測を2地点)を実施した.臨時観測期間中に得られた極浅部地震の波形は,P波初動から数秒は比較的短周期であるがコーダ部分は長周期であり,地震の継続時間は20〜40秒間続くという特徴がある.また,極浅部地震はしばしば連発して発生することがわかった.さらに,極浅部地震は多くの観測点で引きの初動極性が卓越するが,いくつかの観測点では初動極性が押しであることが判明した.臨時地震観測のデータと定常観測網のデータを合わせて震源決定を行った結果,極浅部地震は平成新山直下の深さ約200 mで発生していることが明らかになった.震源は噴火前から存在している地山(普賢岳溶岩ドーム)と噴火後に噴出した平成新山溶岩ドームとの境界に沿うように分布し,1例を除いて平成新山溶岩ドームの噴出源である地獄跡火口付近に位置することがわかった.広帯域MT観測の結果からは,噴火前から存在している地山(普賢岳溶岩ドーム)は高比抵抗領域としてイメージングされる一方で,その上部に平成新山溶岩ドームに対応するやや低比抵抗な領域がイメージングされた.浅部地震の初動の極性分布を説明するために,closing crackとshearの同時発生を仮定した手法(Shimizu et al., 1987; Vaclav Varycuk, 2001; 林田他, 2019, JpGU)や体積変化を仮定したCLVDモデルを適用した結果,地震のT軸をある程度拘束することでき,その向きはイベントごとに異なることがわかった.
極浅部地震はその震源分布と引き波が卓越することから,地山(普賢岳溶岩ドーム)と平成新山溶岩ドームの境界付近に位置する空隙の収縮が原因であると考えられる.しかし,比抵抗構造の結果から,極浅部地震の直下の地山(普賢岳)は高比抵抗であり,大規模な熱水系を構成するクラックなどの空隙が潰れることが極浅部地震の原因とは考えにくい.また,T軸の向きが一定の方向を示していない事実もあわせて,極浅部地震は,普賢岳と平成新山溶岩ドームの境界付近,特に地獄跡火口付近に多く存在する,ランダムな向きを持つ微小な空隙が潰れることによって発生していると考えられる.