JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS17] 地震全般

コンビーナ:大林 政行(独立行政法人海洋研究開発機構 火山・地球内部研究センター)、中東 和夫(東京海洋大学)、落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)

[SSS17-P12] 振幅の頻度分布とカルバックライブラーの情報量を用いた信号の検出方法

*大島 光貴1竹中 博士2 (1.清水建設株式会社、2.岡山大学)

キーワード:信号検出、確率密度関数、カルバックライブラー情報量

地震計の記録中から信号を検出する方法については、これまでに様々な研究が行われてきた。著者らは、地震計の記録の振幅の頻度分布(確率密度関数)とカルバックライブラーの情報量を用いて、地震の信号を検出する方法を開発した(Oshima and Takenaka, 2020)。地震の波形の含まれていない地震計の記録は、地盤の微動や電気ノイズなどからなる。つまり、ランダムなノイズの足し合わせになっていると考えられる。これに対して、震央距離100km程度までの地震の初動部分は、Fermatの定理により震源から観測点までの最短経路を通ってきた直達波から構成される。電気通信工学におけるレイリーフェージングの研究からは、ランダム位相波の足し合わせからなる波の絶対振幅はRayleigh分布となることが知られている。また、地震学における散乱理論により、地震波形のコーダ波部分の絶対振幅がRayleigh分布となることが示されている。また、統計学における中心極限定理によれば、任意の確率過程から独立にサンプリングされたデータサンプルの足し合わせは正規分布に従うことが示されている。これらはつまり、地震波の初動部分を除いては、地震計記録の振幅の確率密度関数は、Rayleigh分布や正規分布により近似されることを示している。また、情報論の観点からは、正規分布は同じ平均値及び分散を持つあらゆる統計分布の中で最大のエントロピー(平均情報量)を持つ分布であり、地震計記録の振幅の確率密度関数が正規分布に近いということは、記録中にエントロピーが小さくなるような、発生しにくい事象(地震の発生などによる信号)が含まれていないことを意味する。Oshima and Takenaka (2020)は、これらことを利用し、地震計の記録から地震動を検出する手法を開発した。この方法では、地震波の検出は以下の4つの手順により行われる。1.タイムウィンドウ中に含まれる地震計記録の振幅の確率密度関数を求める。2.求められた確率密度関数と同じ平均値、分散をもつRayleigh分布または正規分布を求める。3.1と2で得られた2つの分布の類似度をKullback-Leiblerの情報量により定量化する。4.1~3を地震計の記録の先頭から末尾まで、タイムウィンドウを移動させながら行う。これらの手順により得られたKullback-Leiblerの情報量の時系列は、地震計記録の振幅分布がRayleigh分布や正規分布から大きく逸脱する部分(つまり、地震波の初動部分)では、大きな値をとることとなる。したがって、上記1~4の手順により得られたKullback-Leibler情報量の時系列のピークを探すことにより、地震波を検出することができる。発表では、Oshima and Takenaka (2020)の適用例を紹介する。


謝辞:防災科学技術研究所のKiK-netの強震波形記録を使用させて頂きました。ここに記して御礼を申し上げます。