JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS17] 地震全般

コンビーナ:大林 政行(独立行政法人海洋研究開発機構 火山・地球内部研究センター)、中東 和夫(東京海洋大学)、落 唯史(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター 活断層・火山研究部門)

[SSS17-P14] 2011年東北地方太平洋沖地震前の3か月間に観測された発生までの3段階の過程(4)

*末 芳樹1 (1.なし)

キーワード:東北地方太平洋沖地震、前兆、電磁気異常、熱異常

1.はじめに
主題の地震に関して論者は次のような調査研究を行ってきた。
まず、広帯域地震観測網F-netの運用情況を調べ、欠測観測点が地震に先駆ける2010年12月22日から2011年1月18日にかけてと2011年2月16日から2011年3月2日にかけての2度に亘り増加し、特に2月19日から3月2日は震源近くを主体に最多の4観測点(札幌(HSS),岩手山形(IYG),気仙沼(KSN),白峰(SRN))となった事を示した。(末, 2013)
そこで、このF-netの挙動を理解すべく種々の観測結果を集め、地震発生前の凡そ3ヵ月間が3つの段階からなる全体像を示した。即ち、
第一段階: 陸側プレートの歪蓄積(圧縮)の最終段階であり、歪蓄積が限界点に到達。
第二段階: 震源域付近でスロースリップが発生、陸側プレートも移動方向を反転。
第三段階: 本震に至る最終段階。
である。(末, 2017)
次に、第一段階(2011年11月末-2011年1月28日頃)で発生した事象に焦点を当てより詳細に調べた。その結果、2011年1月28日頃と考えられる歪蓄積の最終日に先駆ける1月3日~18日に陸側プレートに設置されたF-net等の計測器に大きな振動が記録されている事が判明した。(末, 2018)尚、この段階の開始日を2010年11月30日小笠原諸島西方沖地震M6.9を含めるべく11月末とする。
さらに、第二段階(2011年1月29日頃-3月2日頃)で発生した事象を調べた。この段階では、1月29日頃から震源域付近でスロースリップが発生し、同時に陸側プレートの反転も観測された。さらに2月中旬から下旬にかけては三陸沖を中心とした活発な地震活動、スロースリップ域の領域拡大とF-netの欠測増加があった。(末, 2019)
以上の経過を経て、本報では地震発生直前の第三段階(2011年3月6日頃から本震まで)の挙動について報告する。尚、最新の研究結果に基づき、この段階の開始日を3月6日頃とする。

2.解析
GEONETの観測結果が示すように、東北地方の各地は1月29日以降、それぞれ独自の動きをしていたが、3月6日頃より東北地方の広い領域が一斉に海溝軸へ向かう動きを示している。ほぼ同期日に電磁気異常および熱異常が報告されている。 これらの異常の発生場所は、震源域付近のプレートの境界であると推測される。
この段階で観測された事象を以下(項目, 期日, 特記事項)に示す。
GEONET(東北地方広域の滑り), 3/6以降, (神山, 2012)
VLF/LF電磁気異常, 3/5-6, (Hayakawa et al., 2012)
ULF/ELF電磁気異常, 3/6, (Ohta et al.,2013)
ULF電磁気異常, 3/6, (Hayakawa et al., 2012)
GPSTEC電磁気異常, 3/7-8, (廣岡 et al., 2016)
GPSTEC電磁気異常, 3/11, (Heki, 2011)
OLR放射熱異常, 3/7-10, (Ouzounov et al., 2011)

3.今後の取り組み
この地震では発生前の6日間に、陸側プレートの海溝軸方向への動き、電磁気及び熱的異常が同時に見られる。今後は、これら各方面からの研究が必要と思われる。

参考文献:
Hayakawa M. et al., 2012, Ann. Geophysics (Italy), 55, N. 1, 95-99.
Heki, K., 2011, Geophys. Res. Lett, 38, L17312.
神山眞, 2012, 平成24年度地盤工学会, 東北支部総会講演会.
廣岡伸治 et al., 2016, 電気学会論文誌A(基礎・材料・共通部門誌), 136, 5, 265-271.
末芳樹, 2013, JpGU2013, SSS30-P01.
末芳樹, 2017, JpGU2017, SSS14-P08.
末芳樹, 2018, JpGU2018, SSS13-05.
末芳樹, 2019, JpGU2019, SSS09-P03.
Ohta, K. et al., 2013, Radio Science, 48, 5, 589-596.
Ouzounov D. et al., 2011, Earthquake Science, 24, 6, 557-564.