JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT50] 合成開口レーダーとその応用

コンビーナ:木下 陽平(筑波大学)、森下 遊(国土地理院)、小林 祥子(玉川大学)、阿部 隆博(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 地球観測研究センター)

[STT50-06] Sentinel-1 wide-swath SARデータを用いた台湾地域における時系列地表変動の解析

*平中 章貴1石塚 師也1林 為人1 (1.京都大学)

キーワード:Sentinel-1、干渉SAR時系列解析、台湾

地表変動の常時把握は,地下水流動や資源開発,恒常的な歪の蓄積等のモニタリングにおいて重要である。2014年に打ち上げられたSentinel-1衛星にはIWSモードと呼ばれる,観測幅が250 kmに及ぶ広範囲な領域を高解像度で観測する技術が搭載された。これにより従来の衛星と比較してより広域かつ高頻度に観測を行うことが可能となり,詳細な地表変動の把握に有効であると予想される。本研究では,台湾地域を対象とした。台湾地域での主な地表変動要因はプレート運動と地下水の過剰汲み上げとされている。台湾地域は造山運動が活発な地域であり日本と同じく地震多発地域である。また,近年では地下水の過剰汲み上げが問題視されており,地下水位の低下による地盤沈下が引き起こされている。本研究ではSentinel-1のIWSモードにより得られたSARデータを用いることで台湾地域における近年の地表変動を明らかにするとともに,プレート運動と地下水の過剰汲み上げといった要因による,異なる特徴をもつ変動成分を区別した。また,Envisat衛星を用いた先行研究と比較することでSentinel-1の妥当性を評価した。

 本研究では,2017年10月から2019年10月の間に北行軌道で取得されたSentinel-1による62シーンのデータを用いて干渉SAR解析を行った。得られた115ペアの結果を用いてSBAS法による干渉SAR時系列解析を行った。本研究で解析した干渉ペアは全て基線長が200 m未満であった。続いて,時系列地表変動モデルを用いて,観測域の季節性変動と長期的な変動の寄与を推定した。具体的には年周期の正弦関数および時間の一次関数を最小二乗的にフィッティングした。

 解析結果によると台湾西部に1個所,東部に2個所で3 cm/年を超える地表変動が推定された。また,季節変動による結果では台湾西部では大きな季節変動が見られたが東部の2個所では変動は見られなかった。このことから西部では降雨による季節的な地下水流出入が大きく,Huang et al.,(2016)によると台湾で問題視されている地下水の過剰利用が盛んな地域と一致した。また東部では地下水の影響が見られないもののプレート運動による地表変動が起きていると予測される。

 本研究で得られた地表変動速度の妥当性を検討するため,台湾の西部と北東部に関して時系列解析による先行研究(Huang et al., 2016; Su et al., 2017)と比較したところ,解析期間は異なるが同様の傾向を示した。季節変動に関してHuangら(2016)による台湾西部の先行研究による結果と比較したところ,整合的であった。そのため,本研究で得られたSentinel-1による広域なSARデータでの解析は有効であると考えられる。