JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT50] 合成開口レーダーとその応用

コンビーナ:木下 陽平(筑波大学)、森下 遊(国土地理院)、小林 祥子(玉川大学)、阿部 隆博(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 地球観測研究センター)

[STT50-P08] PALSAR-2衛星を用いた平成30年西日本豪雨における浸水域抽出手法の評価

*架谷 隆太1永井 裕人2 (1.早稲田大学 創造理工学研究科、2.早稲田大学 教育学部)

キーワード:合成開口レーダ、正規化後方散乱強度変化指標、コヒーレンス解析、浸水域抽出

近年地球温暖化に伴い、台風や大雨の緊急観測や広域的な被害把握の手段で地球観測衛星搭載の合成開口レーダ(SAR: Synthetic Aperture Rader)を使用する機会が多い。SAR より浸水域を抽出する手法は多く提案されているが、多くが強度情報から後方散乱係数の閾値処理を行う手法である。一方で、強度情報と位相情報を組み合わせて浸水域を抽出する手法はまだ確立しておらず実施例が少ない(Ohki et al., 2016)。

本研究では、陸域観測技術衛星「だいち2号」搭載のLバンドSAR(PALSAR-2)衛星を利用した。強度情報からは、浸水前複数画像を用いて異常な水域を表示する事が可能な正規化後方散乱強度変化指標(NoBADI: Normalized Backscatter Amplitude Difference Index)画像(Nagai et al., 2017)と後方散乱強度単画像を作成した。位相情報からは、災害前後直前ペア : γpre(観測間隔幅約3ヶ月)と災害前後同季節ペア : γsummer (観測間隔幅約2年間)の2種類の画像を作成した。本研究での検証領域は、平成30年豪雨で浸水した岡山県倉敷市・総社市の浸水域とその周囲3km の領域とした。強度情報からは、水田域・畑地域・建物域を対象に土地被覆別に分類し浸水域を抽出した。強度情報には、スペックルノイズ除去フィルタ4種類とウィンドウサイズ5種類を適用させた。位相情報からは建物域を対象として浸水域を抽出した。浸水域抽出精度指標としてκ係数を利用した。

浸水域抽出の結果、水田域、畑地域はスペックルノイズ除去フィルタ有無に関わらず後方散乱強度単画像を用いた方が高いκ係数の値を示す事が分かった。フィルタウィンドウサイズを拡大するほど高いκ係数を示す事が確認された。都市域は位相情報のコヒーレンス画像を用いた場合、最も高いκ係数の値を示した。位相情報のκ係数に関してγpre :κ = 0.397 γsummer :κ=0.037が算出された事より、干渉ペア作成時において観測期間を考慮する必要があると確認された。

今後の課題として、傾斜角等で土地を分類し、地形に応じて最適な浸水域の抽出手法を提案する事や高解像度画像を維持する観点から最適なフィルタウィンドウサイズを決定する事が列挙される。

参考文献 :
Ohki, M., Watanabe, M., Natsuaki, R., Motohka, T., Nagai, H., Tadono,T.,Suzuki, S., Ishii, K., Itoh, T., Yamanokuchi, T., Shimada, M., : FloodArea Detection Using ALOS-2 PALSAR-2 Data for the 2015 HeavyRainfall Disaster in the Kanto and Tohoku Area, Journal of The Remote Sensing Society of Japan, VOL36, No4pp. 348-359, 2016
Nagai, H., Ohki, M., Abe,T., : Robust flood area detection using a L-band synthetic aperture radar: Preliminary application for Florida, the U.S. affected by Hurricane Irma, AGU, 2017