JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT50] 合成開口レーダーとその応用

コンビーナ:木下 陽平(筑波大学)、森下 遊(国土地理院)、小林 祥子(玉川大学)、阿部 隆博(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 地球観測研究センター)

[STT50-P11] オープンソース干渉SAR時系列解析パッケージLiCSBASとその応用

*森下 遊1,2Lazecky Milan 2Wright Tim 2Weiss Jonathan 3,2Maghsoudi Yasser 2Elliott John 2Hooper Andy 2 (1.国土地理院、2.University of Leeds、3.University of Potsdam)

キーワード:干渉SAR、Sentinel-1、時系列解析、変動監視、地盤沈下、自動処理

過去5年間にわたり、CバンドのSentinel-1とLバンドのALOS-2は、世界中の地表変動を高い時空間分解能で明らかにできる可能性を持つ有益なSARデータを大量に提供してきた。しかし、多くの利用者にとって、特に広域を対象とする場合、その大量のデータをフル活用することは困難となっている。日本域では、国土地理院がALOS-2データを使って地表変動監視を行ってきたが、高度な時系列解析は国家スケールでは実現されていなかった。

これらの問題を解決するため、我々は、Sentinel-1自動干渉解析システムであるLiCSARと連携した、オープンソース干渉SAR時系列解析パッケージであるLiCSBAS(https://github.com/yumorishita/LiCSBAS, https://doi.org/10.3390/rs12030424)を開発した。LiCSBASは無償で利用可能なLiCSARプロダクトを利用するため、時系列解析結果を得るにあたり、利用者は解析処理時間とディスク容量を削減できる。LiCSBAS処理過程では、多くのアンラップエラーを持つ干渉画像を環閉合により自動的に特定し、除去する。複数のノイズ指標から算出するマスクを利用して、信頼できる変動時系列及び速度を導出する。GACOSを利用することで容易に大気ノイズ補正を実行可能である。

日本の東北地方南部及び越後平野における解析事例により、LiCSARプロダクトを利用したLiCSBAS解析が、100km以上の広域及び数kmスケールの局所的な変動を1cm/epoch未満、2mm/yr程度の精度で検出できることが、GNSSや水準測量結果との比較によって示されている。新潟市、小千谷市、三条市では、それぞれ線形、周期的、突発的といった、時間的性質の異なるさまざまな変動が検出された。

LiCSBAS及びLiCSARプロダクトは、グローバルに利用可能で豊富なSentinel-1のSARデータのさらなる活用を促進し、科学研究や社会的利益のための応用を増進するであろう。

また、LiCSBASはSentinel-1以外の衛星や多様なソフトウェアによって生成された干渉画像も処理可能である。LiCSBASは国土地理院の変動監視能力を向上させ、ALOS-2や将来のALOS-4データを活用した継続的かつ着実な国土の地表変動監視を可能にするであろう。

本発表では、日本の全主要都市域や大陸規模のアルプスヒマラヤ造山帯への適用事例も報告する。