JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT51] 地震観測・処理システム

コンビーナ:前田 宜浩(防災科学技術研究所)

[STT51-01] 海底地震観測網で観測されるエアガンの自動識別法

*溜渕 功史1 (1.気象研究所)

キーワード:自動震源決定、エアガン探査、OBS

近年,日本海溝及び南海トラフの海域では,稠密かつ高感度なケーブル式海底地震観測網(S-net,DONET)が展開されている.これらのデータを有効に活用することは,海域における緊急地震速報の精度・迅速性の向上や震源分布の詳細な把握に貢献するため,調査研究はもとより防災上も極めて重要である.一方で,地殻構造探査に用いられるエアガンなど,陸上観測点とは異なるシグナルも多数検出する.実際,一元化震源カタログの自動処理として開発したPF法(溜渕・他, 2016, 験震時報; Tamaribuchi, 2018, EPS)を用いてS-netの地震波形を処理したところ,エアガン発振中は1時間に200個程度のイベントを検出することが判明した.したがって,エアガンによるシグナルを適切に除外することが,緊急地震速報や震源カタログ等の自動処理の精度を高めるうえで重要となる.
エアガンは,発振点の近傍で比較的高周波のパルス的なシグナルが観測されることが特徴である.しかし,やや発振点から離れると,明瞭な特徴が見られなくなるため,一つ一つのシグナルから判別することは難しい.そこで,連続波形を観察すると,エアガンは人工的に行うため,10秒または20秒程度の等間隔に発生する,各振動波形同士の振幅や形が似ている,といった特徴がある.本発表では,振動波形同士の振幅や形が似ていることを利用し,波形の自己相関を用いて,自然地震かエアガンかを判別することを試みたので報告する.
2016年11月22日に発生した福島県沖(M7.4)の地震では,同日に余震域の南(茨城県沖)でエアガン探査が行われており,地震とエアガンを識別するデータセットとして都合が良い.この地震波形に自己相関による自動識別を適用したところ,余震の決定数は2%の減少に留まる一方で,エアガンによるイベント検出を91%減少させることに成功した.さらに南海トラフ沿いなどの事例にも適用し,その有効性を確認した.
謝辞:防災科研S-net,DONETの波形を利用しました(https://doi.org/10.17598/NIED.0009).