[STT51-P02] パーティクル・モーションから推定したS-net地震計におけるエアガン信号の入射方位のずれの原因についての考察
キーワード:S-net、パーティクル・モーション、透過波
筆者は、防災科学技術研究所により北海道根室半島沖から千葉県房総半島沖に至る広大な海域に設置された海底ケーブル型観測システム「日本海溝海底地震津波観測網」(S-net)の観測点150点のうち、12観測点について、近傍を測線が通過したエアガン信号を用い、パーティクル・モーションから、地震計の設置方位、並びに平面波の流体―固体境界入射を仮定したZoeppritz方程式に基づく理論値との比較による海底表層の地震波速度を推定した。得られた結果は、Takagi et al.(2019)におけるレイリー波を用いた設置方位の推定結果と良く一致している。また、地震波速度については、P波速度は全体の観測点を通じて1.8 km/s程度、S波速度は、海溝陸側観測点で0.4 km/s以下、海溝海側観測点で0.3–0.7 km/sと推定された。
しかしながら、パーティクル・モーションに基づいて推定されるエアガン信号の入射方位は、実際のエアガンの存在方位(船舶方位)と時系列上において常に一致するわけではなく、ずれが認められた。その一部は、近傍に存在する比高の大きな海山など、局所的な凹凸のある海底地形に起因する。しかしながら一方で、こうした海底地形が見られない観測点においてもずれが見受けられる。音源方位のずれについては、岩手県釜石市沖の三陸沖システムの海底地震計を用いたエアガンの音源定位においても最大で約9度のずれが確認されている(Iwase, 2016)。
日本海溝域に設置された観測点に共通する地形的特徴は、斜面、即ち傾斜を有する海底地形であるが、これまでの推定では、水平境界を有する流体―固体境界への平面波入射を仮定している。そこで、流体―固体境界が傾斜している場合の影響を検討した。しかしながら、海上保安庁のJODCで公開されている500mメッシュ海底地形データから推定されるような傾斜角では、観測値が説明できない。また、エアガン信号に見られる表面波のパーティクル・モーションから推測される傾斜も、おおよそ海底地形データと同等である。
そこで、地震計のX軸と方位角のずれとの関係を調べたところ、地震計のX成分の方位ではずれが小さくなる傾向がみられた。このことから、地震計の設置方位並びに海底とのカップリング状態の影響が示唆される。
今後、観測事例を追加して詳細に検討する予定である。
本研究の実施にあたり、防災科学技術研究所が公開している同研究所及び東大地震研究所の地震波形データ、並びに海上保安庁JODCが公開している海底地形データを利用しました。ここに記して謝意を表します。
参考文献
R. Iwase, Jpn. Jour. App. Phys, 55, 07KG01, 2016.
R. Takagi et al., SRL, 90(6), 2175-2187, 2019.
しかしながら、パーティクル・モーションに基づいて推定されるエアガン信号の入射方位は、実際のエアガンの存在方位(船舶方位)と時系列上において常に一致するわけではなく、ずれが認められた。その一部は、近傍に存在する比高の大きな海山など、局所的な凹凸のある海底地形に起因する。しかしながら一方で、こうした海底地形が見られない観測点においてもずれが見受けられる。音源方位のずれについては、岩手県釜石市沖の三陸沖システムの海底地震計を用いたエアガンの音源定位においても最大で約9度のずれが確認されている(Iwase, 2016)。
日本海溝域に設置された観測点に共通する地形的特徴は、斜面、即ち傾斜を有する海底地形であるが、これまでの推定では、水平境界を有する流体―固体境界への平面波入射を仮定している。そこで、流体―固体境界が傾斜している場合の影響を検討した。しかしながら、海上保安庁のJODCで公開されている500mメッシュ海底地形データから推定されるような傾斜角では、観測値が説明できない。また、エアガン信号に見られる表面波のパーティクル・モーションから推測される傾斜も、おおよそ海底地形データと同等である。
そこで、地震計のX軸と方位角のずれとの関係を調べたところ、地震計のX成分の方位ではずれが小さくなる傾向がみられた。このことから、地震計の設置方位並びに海底とのカップリング状態の影響が示唆される。
今後、観測事例を追加して詳細に検討する予定である。
本研究の実施にあたり、防災科学技術研究所が公開している同研究所及び東大地震研究所の地震波形データ、並びに海上保安庁JODCが公開している海底地形データを利用しました。ここに記して謝意を表します。
参考文献
R. Iwase, Jpn. Jour. App. Phys, 55, 07KG01, 2016.
R. Takagi et al., SRL, 90(6), 2175-2187, 2019.