JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT52] 最先端ベイズ統計学が拓く地震ビッグデータ解析

コンビーナ:長尾 大道(東京大学地震研究所)、加藤 愛太郎(東京大学地震研究所)、矢野 恵佑(東京大学大学院情報理工学系研究科)、椎名 高裕(東京大学地震研究所)

[STT52-P01] 日本全国の52地域で発生する深部低周波地震の活動の網羅的な解析

*栗原 亮1小原 一成1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:深部低周波地震

日本全国の多くの⽕⼭地域では通常の地殻内地震の発⽣域の下限よりも深い,深さ10–50 km を震源とし,同規模の通常の地震に⽐べ低周波で,およそ1–10 Hz に卓越する地震波を放出する深部低周波地震(Deep low-frequency earthquake, 以下DLF とする)が観測されている.DLF 発生源の周辺には低速度域が存在するため,その発⽣には地殻深部での流体の関与が指摘されている(e.g. Hasegawa et al., 2005). しかし,DLF の発⽣する深さは⽕⼭毎に⼤きく異なり(e.g. 鵜川, 2001;⼩菅, 2017),地震の規模が⼩さく震源位置やメカニズム解の誤差が⼤きいことから,現在もDLF の空間分布や発⽣モデルは議論の対象となっている.

栗原・他(2019,地震学会)では,Network Correlation Coefficient法(NCC法; Ohta and Ide, 2011)による震源再決定,波形相関を用いたグループ分類,マッチドフィルタ法による網羅的検出により,全国の火山地域におけるDLFの解析を行った.その結果,例えば肘折では,DLFが深さ方向に4つの離散的なグループに集中して分布し,グループ毎によって定常的に発生するグループと群発的に発生するグループが存在し,活動様式が異なることがわかった.また,このような特徴は全国的にも共通しており,DLFが深さ方向に離散的な複数のグループに分かれて分布することを明らかにした.

本研究では,DLFグループの活動様式における群発性または定常性を定量的に評価するため,グループ毎の活動に占める群発的なDLFの割合である群発率という指標を定義することで,全国のDLFの発生様式の比較を行った.群発率は,そのグループ中で発生した全てのDLF に占める群発的なDLFの割合を示す.ここで群発的なDLFとは,そのDLFの一つ前のDLFからの発生時間間隔がそのグループでの発生時間間隔の平均を10個以上連続で下回るDLFとして定義した.その結果,東北地方を中心に多くの火山地域においては群発率0.7以下の定常的なDLFの活動が見られたが,焼岳や御嶽山など全国12箇所で群発率が0.7を超える群発的な活動様式が存在することがわかった.また,マグニチュード頻度分布を求めたところ,群発率の高いDLFグループでは,その他の地域に比べてグーテンベルグ・リヒター則におけるb値が高く,より小さなマグニチュードのDLFが多数を占めていることがわかった。さらに,群発率の低いDLFグループではそのグループ内の各DLF間の波形相関が低く,波形があまり似ていないのに対して,群発率の高いグループのDLFでは,そのグループ内の各DLF間の波形相関が高く,群発的なDLFでは波形が似ている傾向があることがわかった.これらのことから,定常的なDLF活動は近接した複数の震源に広がってDLFが発生しているのに対して,群発的なDLFは単一の震源に集中してDLFが発生しているものと考えられる.