JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT53] 空中からの地球計測とモニタリング

コンビーナ:楠本 成寿(富山大学大学院理工学研究部(都市デザイン学))、小山 崇夫(東京大学地震研究所)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)、大熊 茂雄(産業技術総合研究所地質情報研究部門)

[STT53-04] 登別火山における繰り返し空中磁気測量

佐藤 彰紀1、*橋本 武志1早川 智也2吉川 契太郎3小山 崇夫4 (1.北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター、2.日本工営株式会社、3.北海道開発局、4.東京大学地震研究所)

キーワード:空中磁気測量、無人ヘリコプター、登別火山

我々は,産官学連携のもと北海道開発局所有の無人小型ヘリを用いて火山の調査技術の開発を継続的に実施してきた.その一環として,北海道の登別火山では,2016年,2017年に続き,2019年に3回目の空中磁気測量を行った.無人ヘリはGPSで自動航行するため,ほぼ同一の航路を繰り返し飛行することが可能であり,時間変化の検出という観点から極めて有利である.火山活動に伴って周辺の磁場が変化することは過去に多くの火山で報告されており,そうした磁場変化は,非噴火期にも数ヶ月から数年の時間スケールで起こっていることが近年の研究で明らかになってきている(例えば,橋本・他, 2019).登別火山では,これまで火山活動に伴う地磁気変化の報告事例はなかったが,本研究により,局所的ながら有意と思われる全磁力の変化を検出したので報告する.

 時間変化の検出にあたっては,まず各年の空中磁気データに対して,地上の参照点データとの単純差による補正を施し,日変化等の外部起源磁場を除去した.さらに,異なる年のデータセット間で5 m以内に近接した地点をピックアップし,それらについて磁気異常値の差を求めた.ただし,測位は機体に取り付けられたGPS受信機で行っており,磁気センサはヘリの機体から約4.5 mのロープで吊り下げているため,センサ位置のずれは最大で約10 m程度と考えられる.一方,上空での磁気勾配は概ね1 nT/m以下であるため,時間変化として±10 nTを超える部分については有意とみなせるであろう.
 2016年と2017年の比較では,有意な変化は検出されなかったが,2017年と2019年の比較では,調査域中央部に位置する日和山の山頂付近に,帯磁様の双極子型変化パターン(Fig.1のA)が見いだされたほか,地獄谷の南東側でやや広く磁場が低下していた(Fig.1のB).このうち後者については,調査領域南縁の急崖部にあたること,変化パターンが双極子型でないこと,元の磁気異常分布でも強い低磁気異常の領域となっていることなどから考えて,火山活動に伴う状態変化を反映しているかどうか疑わしい.一方,前者の日和山付近の帯磁様変化については,ピークの振幅が±10数nTなので検出限界レベルに近いものの,明瞭な双極子型のパターンを形成している.2017年の磁気異常データについてUtsugi (2019) の3Dインバージョンを用いて磁化構造解析を行ったところ,日和山から大湯沼にかけては地下浅部の磁化が相対的に小さく,高温域もしくは熱水変質域となっていることが推察された.さらに,2017年から2019年の時間変化分についても3Dインバージョンを行ったところ,日和山の地下浅部に局在化した着磁でほぼ説明できることがわかった.日和山には定常的な噴気活動があることなども考慮すると,後者は火山起源の変動である可能性が高い.本研究により,火山活動活発化に伴う立ち入り規制下でも,この手法がモニタリング項目のひとつとして実施可能かつ有効であることが示された.