JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT53] 空中からの地球計測とモニタリング

コンビーナ:楠本 成寿(富山大学大学院理工学研究部(都市デザイン学))、小山 崇夫(東京大学地震研究所)、光畑 裕司(独立行政法人 産業技術総合研究所)、大熊 茂雄(産業技術総合研究所地質情報研究部門)

[STT53-P04] 火山性二酸化硫黄ガスの画像計測のための多バンド型非冷却型赤外カメラの開発

*實渕 哲也1 (1.防災科学技術研究所)

キーワード:非冷却型赤外カメラ、二酸化硫黄ガス、火山観測

防災科学技術研究所(防災科研)は,「次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト 次世代火山研究推進事業 課題B:先端的な火山観測技術の開発(リモートセンシングを活用した火山観測技術の開発)B2-2:火山表面現象遠隔観測技術の開発」を2016年度より開始した.本事業で我々は,現状の航空機搭載型画像分光装置と赤外カメラの利点を合わせ持つ,地上での観測とヘリコプター等搭載による上空からの斜め観測に両用できる表面現象撮像カメラ(SPIC : Surface Phenomena Imaging Camera)の開発を目指している.

本プロジェクトでは,SPICのプロトタイプの一つとして,非冷却型赤外カメラで構成される,温度分布とSO2ガス濃度分布を観測する,SPIC-Uncooled infrared camera(SPIC-UC)の開発を計画している.本報告では,このSPIC-UCのプロトタイプの最初の開発結果について報告する.

SPIC-UCは,Long Wave Infrared(LWIR(8000~14000nm))領域計測用の非冷却型マイクロボロメータをFocal Plane Array (FPA)に選定し低コスト化を図り,温度分布とSO2ガス濃度分布(高濃度)を計測する費用対効果の高い装置とすることを目指している.

SPIC-UCを実現するため,我々は,内蔵型分光フィルターを有するLWIR(8000~14000nm)領域の非冷却型VGAカメラセンサ(非冷却型マイクロボロメータ)を採用した赤外カメラの試作を実施した.試作機はカメラ1,カメラ2で構成する2眼カメラからなるシステム(同期計測可能)とし,カメラ1の内蔵フィルターは波長9000nm以上の帯域を透過する仕様,カメラ2の内蔵フィルターはSO2ガスの光吸収域である波長8370~8920nmの帯域を透過する仕様とし製作した.性能評価の結果,試作機は,環境温度範囲:-10~50℃にて,0~80℃の黒体に対し,NETDが約0.6Kを達成できること,および,この値を用いたシミュレーションにより,50℃以上の背景の条件下,常温の1~2ppmv以上のSO2ガス濃度分布が検出可能であることが分かった.この結果,本装置を今後,SPIC-UCのプロトタイプ装置とする目途がついた.