JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC45] 活動的火山

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)

[SVC45-11] 人工地震波を用いた姶良カルデラ地下の地震波反射体の検出

*筒井 智樹1為栗 健1井口 正人1 (1.京都大学防災研究所)

キーワード:姶良カルデラ、人工地震、地震波反射、地殻構造、火山構造

姶良カルデラの深部で発生する反射地震波の検出を行い,その発生源について考察を行った.2008年に行われた人工地震探査(井口他, 2009)で得られた人工地震記録には様々な後続相が現れていた.本講演ではすでに筒井・他(2016;JpGUポスター発表)が報告した姶良カルデラ西部の地震波反射体の精査に加えて,姶良カルデラ東部の地下で発生する地震波反射を整理して報告する.
 姶良カルデラの地下構造に関する知見を得ることは姶良カルデラの地下のマグマ溜まりの現状を理解するために必要な事である.桜島の北方に位置する直径約20 kmの姶良カルデラはAramaki (1984)によれば400 km3を超す噴出物を放出したとされている.津久井・荒牧(1990)は2.9万年前(奥野, 2002)にカルデラ噴火をもたらしたマグマと,現在の桜島の活動の源となっているマグマとは別のものであるとしている.しかしながら地盤変動観測結果は桜島の活動と姶良カルデラの地盤変動との間には相関があることを示してきた(Omori, 1920; 江頭・他, 1997; Yamamoto et al., 2013).
  2008年観測記録を精査して姶良カルデラ方向から入射する波を選別して解析を行うことで興味深い結果を得た.2008年観測の複数の測線の交差点を利用して桜島島内で3箇所(南西部,北部,北東部),姶良カルデラ北東部1箇所の地震計アレイを構成した.地震計アレイの構成は場所によって異なるが,アレイを構成する観測点は5~15点,アレイ口径は0.4 ~ 1.5 kmの範囲のサイズであった.アレイ解析は長さ0.4秒の三角形窓関数で波形記録を切り出し,0.02s/kmのスローネスステップでスローネスベクトルを与えてそれぞれのセンブランスを計算した.
 アレイ解析の結果,2008年の人工地震記録には振源方向から入射する波ばかりではなく,遅い到来時刻になるほど横方向から入射する波や震源とは反対の方向から来る波などの到来が卓越する傾向がうかがわれた.そのなかから到来時刻とセンブランス値のピーク位置のスローネスベクトルから,姶良カルデラ深部で発生するPP反射波とPS変換反射波を複数抽出することができた.
 その結果,姶良カルデラ東部のほうが西部に比べて地下で発生する後続相が多数分離されること,姶良カルデラ西部の約14 kmの深さにおいて顕著なPS変換反射波が発生していることが明らかになった.また,ファンシューティング記録をつくり後続相の現れる範囲の精査を行った結果,カルデラ東部では若尊カルデラと桜島北東沖に後続相発生源が集中することが明らかになった.