JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC45] 活動的火山

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)

[SVC45-12] 人工地震・近地地震データを用いた姶良カルデラの3次元地震波速度構造

*為栗 健1八木原 寛2井口 正人1筒井 智樹1 (1.京都大学防災研究所附属火山活動研究センター、2.鹿児島大学南西島弧地震火山観測所)

キーワード:桜島火山、地震波速度構造

1.はじめに
姶良カルデラは九州南部の鹿児島湾奥に位置する東西20km、南北20kmの広がりをもった火山性陥没地形である。姶良カルデラの最後の噴火とされ、入戸火砕流を生じた噴火は約2.9万年前(奥野, 2002)に発生している。その後,カルデラ南縁に桜島火山が形成され、現在も活発な噴火活動を継続している。1992年以降、姶良カルデラ周辺の地盤の隆起・膨張が続いており、GPS観測および水準測量から膨張源(マグマ溜り)は姶良カルデラ中心下の深さ約10 kmと見積もられている(例えば,Iguchi , 2013 ; Yamamoto et al., 2013)。桜島および姶良カルデラの構造、桜島火山のマグマ供給系を明らかにするために、2008年11月にダイナマイトを用いた人工地震探査が行われた。トモグラフィー法や屈折法による探査深度は深さ3-4 km程度であり、姶良カルデラ直下10km付近に推定されている膨張源まで探査深度が及んでいない。また、地盤変動解析では点圧力源が仮定され膨張源の体積変化量は推定できるが、膨張源の絶対量は未知である。そこで、膨張源の深度に波線が通過する自然地震データを用いて、姶良カルデラの3次元地震波速度構造の解析を行った。
2.データおよび解析結果
2009年以降、南九州一帯において臨時地震観測点を設置し(最大時17点)、自然地震観測を行っている。臨時観測点に既存観測点(桜島火山観測所、防災科学技術研究所Hi-netおよび鹿児島大学のJDXデータ流通網の観測点)のデータを含め、48点における自然地震424イベントのP波、S波到達時を用いて3次元地震波速度構造解析を行った。また、2008年人工地震探査データ(8発破点、458観測点)をあわせることで浅部構造の解像度を向上させた。波線数は自然地震でP波が14,320、S波が8,453、人工地震P波が3,121である。速度構造はThurber (1983) のグリッド空間を用い、グリッド間隔は4kmで解析を行った。Resolutionが0.6以上の領域についてチェッカーボードテストを行い、姶良カルデラ内の深さ20km以浅は解の信頼性があった。
姶良カルデラ内北東部の深さ5km付近にP波速度が周辺より10%程度低速になる領域が見られる。この付近の海底には若尊火山があり活発な熱水活動も発生している。姶良カルデラ中央部の深さ15km付近に周辺より20%以上S波速度が低速になる領域があり、最も大きな速度異常が見られている。姶良カルデラ周辺のGNSSおよび水準測量観測から姶良カルデラ中央部の深さ約10km付近に圧力源が推定されており、桜島の火山活動に応じて膨張・収縮が見られることから、その圧力源がマグマ溜まりだと推定されている。速度構造解析から得られたS波速度の低速異常領域は地盤変動から推定されているマグマ溜まりの位置の下部にあたる。今後は自然地震のイベント数を増加させてグリッド間隔を小さくし、S波低速度領域と圧力源の位置関係や速度異常領域の大きさを詳細にする。