JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC45] 活動的火山

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)

[SVC45-17] 箱根火山の地球化学的モニタリング

*沼波 望1大場 武1谷口 無我2 (1.東海大学理学部化学科、2.気象研究所火山研究部)

キーワード:箱根火山、地球化学的モニタリング、化学組成、安定同位体比

要旨
箱根火山では2015年に地震回数が増え,6月末に中央火口丘北山麓に位置する大涌谷地熱地帯で小規模な水蒸気噴火が発生し,噴気の組成に顕著な変動が観測された(Ohba et al, 2019).本研究では,2019年5月の地震回数の増加に注目し,2019年1月から12月の期間,大涌谷地熱地帯周辺の噴気と,大涌谷を水源とする河川水,大涌谷で湧出している温泉水の化学組成および安定同位体比の経時変化を調べた.調査した噴気は自然遊歩道脇の噴気孔(N)と上湯場地熱地帯の噴気孔(S),大涌谷地熱地帯の52号井の隣に形成された15-2火口(C)である.
NとSのHe/CH4比,CのHe/CH4やCO2/H2O,CO2/H2S,CO2/ CH4比は2月あるいは3月,4月から増加し,7月あるいは8月から減少した.Cのδ18O,δDは3月から低下し,6月に上昇した.河川水のCl-は1月から増加した.温泉水のCl-は5月~7月にかけて一時的に増加した.
CのHe/CH4比やCのCO2/CH4比などは,地震活動が低調であった2019年2月あるいは3月頃から明確な上昇を示した.2015年の活動期では,これらの比の変動は,地震活動の活発化とほぼ同期しており,2019年の活動と差異が認められる.

Reference
T. Ohba, M. Yaguchi, K. Nishino, N. Numanami, Y. Daita, C. Sukigara, M. Ito, U. Tsunogai (2019): Earth, Planets and Space, 71:48, p1-18.