JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC45] 活動的火山

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)

[SVC45-18] UAV搭載用火山プルーム自動採取装置の開発と阿蘇中岳の噴気温度遠隔測定への応用

*角皆 潤1新宮原 諒1伊藤 昌稚1中川 書子1吉川 慎2宇津木 充2横尾 亮彦2 (1.名古屋大学大学院環境学研究科、2.京都大学大学院理学研究科)

キーワード:火山ガス、プルーム、水素、UAV、自動プルーム採取装置、阿蘇

はじめに
 火山の噴気温度の絶対値やその時間変化は、火山活動の現状や山体内部における脱ガス過程に関する重要な指標となる。しかし、活火山の噴気孔における直接測定は危険で、実現が難しいことが多い。また赤外放射を利用した遠隔測定は、観測距離が100 mを超えると正確な温度測定は困難になり、また火山灰で視界が遮られると測定不能になる。
 そこで筆者らは、噴気ガス中に含まれている水素分子(H2)と主成分である水蒸気(H2O)の間の水素同位体(1HおよびD)交換反応の同位体分別係数が温度とともに大きく変化するという特性に着目し、噴煙(プルーム)中のH2のD/1H比から噴気中のH2のD/1H比を推定してこれを温度に換算する遠隔温度測定法(HIReTS: Hydrogen Isotope Remote Temperature Sensing)を考案し、阿蘇中岳や桜島、薩摩硫黄島硫黄岳といった火山で、噴気温度の遠隔測定を実現してきた (Tsunogai et al., 2011; 2013; 2016)。
 しかしHIReTS法では、一般対流圏大気 (約0.5 ppm) の少なくとも2倍以上のH2濃度のプルーム試料を採取しないと、十分な精度で噴気温度を決定することが出来ない。平穏時なら火口近傍に近づいたり、有人機を使うなどすることでこのレベルのプルーム試料を採取することが出来るが、噴火中の火山でこのレベルのプルーム試料を採取するには、無人機を使って試料を採取するしか無い。そこで筆者らは、ドローンに代表されるUAVを用いてプルーム試料を採取することを企画して、これを実現するための自動サンプラーを製作した。今回阿蘇中岳で実機の作動試験を行い、高濃度のプルーム試料の採取に成功したので、その結果について報告する。
自動サンプラーについて
 これまでのHIReTS法では、火口縁の適当な場所まで徒歩で近づき、SO2濃度をモニタリングしながら、高濃度のプルームが飛来した時を見計らって、予め真空に引いたガラス容器(内容積0.5 – 1 L程度)の手動バルブを開放して、大気圧まで採取するグラブ法によりプルーム試料を採取してきた。しかしUAVにガラス容器を搭載することは重量的に不可能だったので、SO2濃度を連続的にモニタリングしながら高濃度時だけ小型ポンプを作動させ、これを内容積可変のテドラーバック中に送り込むことにした。またテドラーバックが一杯になったら自動的に次のテドラーバックに導入することで、一回のフライトで複数個の試料を採取出来るようにした。
謝辞
本研究は、文部科学省次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト (課題B「先端的な火山観測技術の開発」) の助成を受けて実現しました。また現地観測では、森田雅明様 (産総研)、森俊哉様 (東大地殻)、井上寛之様 (京大火山研究センター)、阿蘇火山防災会議協議会の皆様に大変お世話になりました。