JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC45] 活動的火山

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)

[SVC45-23] GNSSキャンペーン観測から得られた三宅島火山の地殻変動と圧力源推定(2013-2019年)

*渡部 陽奈1松島 健2福井 海世渡邉 篤志3及川 純3奥田 隆4小澤 拓5宮城 洋介5 (1.九州大学大学院理学府地球惑星科学専攻、2.九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター、3.東京大学地震研究所、4.名古屋大学環境学研究科地震火山研究センター、5.防災科学技術研究所)

キーワード:三宅島、GNSS観測

三宅島は東京の約180 km南に位置する活火山で,20世紀以降では1940,1962,1983,2000年と約20年の間隔で噴火を繰り返している.Fukui et al. (2015)では,GNSSキャンペーン観測を行い2011から2013年における三宅島の圧力源の推定を行っている.そこで本研究ではさらに新しい期間である2013から2019年における三宅島の地殻変動と圧力源の位置,体積変化量を推定し,三宅島の圧力源の時間的変化を見積もった.

 2013年,2015年,2016年および2019年のいずれも9月に,三宅島全体にほぼ均等に分布するように配置した約15点の基準点においてGNSSキャンペーン観測を行った.このGNSSキャンペーン観測で得られたデータと国土地理院・気象庁が設置している連続観測点の同期間のデータを使用した.得られたデータを解析するためにGNSSリアルタイム・後処理基線解析ソフトウェアRTKLIBver.2.4.2(高須・他, 2007)を使用し,年ごとの観測点の座標値を求めた.座標値から期間ごとの水平方向の変位を見積もると,どの期間においても三宅島南西部を中心として放射線状の変位が見られた.

 2013年から2019年におけるGNSS水平変位に基づいて圧力源を推定した.圧力源の位置および体積変化量の最適値は,火山の地殻活動を分析するために火山用地殻変動解析支援ソフトウェアMaGCAP-V(気象研究所地震火山部,2008)を使用することによって得た.この結果,三宅島の山頂火口から南西約4 km,深さ10 kmの位置に1つの球状圧力源が推定され,2000年噴火前の水準・GNSS測量結果から西村・他(2002)が求めている深部の圧力源と比較するとほぼ同じ位置となった.Fukuiらが指摘していた火口直下のシルやダイク状圧力源の変化は本期間では検出できず,深部の球状圧力源の深さも 3 km浅く推定された.また,球状圧力源は2013-2019年において約1.7×107 m3/yrで膨張を続けていることがわかった.1983-2000年の噴火間に蓄積された体積量は西村・他により約1.7×108 m3と推定されているが,国土地理院(2010),Fukui ら,および本研究から求められた2000-2019年の総蓄積量は2.6×108 m3を越えており,いつ噴火が起きても不思議でない状態であることがわかった.

 本研究は,文部科学省「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」および東京大学地震研究所共同研究プログラムの助成を受けて実施された.国土地理院および気象庁からは連続観測点データの提供を受けた.GNSSキャンペーン観測には多くのGPS大学連合のメンバーに協力を受けた.ここに記して感謝する.