JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC45] 活動的火山

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)

[SVC45-28] 最近の三宅島における地震活動

*森田 裕一1大湊 隆雄1 (1.東京大学 地震研究所)

キーワード:火山性地震、火山活動、三宅島火山

三宅島では,2000年噴火後2006年頃まで山体収縮が続いていたが,それ以降は山体膨張に転じ,深部でのマグマの蓄積が再開している.また,2016年の1月頃から約半年間,山体膨張が一時的に加速する現象が見られた.一方,それに同期して火口からのSO2ガスの放出は1/10程度に低下した.2016年頃より地震活動は以前よりも低下したが,現在も依然として火口周辺に地震が多い状態が続いている.このように三宅島では,2000年噴火の一連の活動は終了して休止しているのでなく,すでに次の噴火への準備を着々と進めている状態にあると言える.次の噴火までどのような事象が地下で起こるかは火山噴火予測には非常に重要な情報であることから,それを調査する目的で,気象庁,防災科技研,東京都の持つ既存の地震観測点11点に加え,次世代火山研究推進事業の一環として,他機関の観測点が少ない中腹に2018年12月に広帯域地震観測点を3点設置して,現在の三宅島の活動をモニターすることを始めた.更に,浅部の地震活動が予想よりも多かったので,2019年5月には陥没で拡大した雄山の火口縁に2観測点,雄山南側中腹に1観測点短周期地震計を増設して地震観測を行った.

現時点で,2018年12月から2019年9月までの地震について解析が終了した.既存の気象庁の観測点,防災科技研,東京都の観測点に加え,上記の新設6観測点のP,Sは初動時刻と地震種別を読み取り,約950個の震源を推定した.この間,気象庁が火山監視業務で震源決定した地震は90個であるので,上記の6観測点の増設により約10倍の地震の震源を決定できるようになったことになる.

今回の解析で明らかになったことを以下に挙げる.
1.三宅島浅部で発生するほとんどの地震は,山頂火口南側の直下の深さ約3㎞に集中して発生している.
2.発生している地震は,その波形の特徴からA型地震とBL型地震に分けられ,更に山体内のごく浅部で発生すると思われるBH型地震も発生している.このBH型地震は,その波形の特徴から,震源は極めて浅い地震と認められる.全体の地震のうち,半数以上がBL型地震で,A型は全体の2割程度であった.
3.BL型地震とA型地震の主たる活動域は,水平方向にはほぼ一致するが,鉛直方向には海抜下約1㎞の深さを境界としてそれ以浅はBL型,それ以深はA型と明瞭に分かれて分布している.この境界の深さはMT探査で推定されている全島的に比抵抗が高比抵抗から深くなるにつれて急激に低比抵抗に変化する境界とほぼ一致し,ここでは溶岩や火砕物の層から火山体を形成する層に変わる領域を示していると考えられる.発生する火山性地震の種別が地下構造(媒質の物性)に大きく依存していることを明瞭に示している.
4.A型地震は現在の火口域だけでなく,火口から南西方向への線状の分布が見られる.この場所は,2000年噴火発生時に見られた最初のダイク貫入域に相当すると考えられる.このダイク形成後ダイク貫入の方向が北東方向に大きく変化し,地震活動は島外へと拡大した.この事は,この屈曲点(「南西節点」と呼ぶ)で応力場の急変があったことを示唆している.
2000年噴火の際には,火口陥没現象の発生前に長周期震動が発生したが,この震動源として直交する2つのダイクの震動とするモデルも提唱されているが,このダイクの交点も南西節点に一致するかもしれない.このようにみると火口から南西節点が2000年噴火の際に,三宅島から神津島・新島へ延びる大規模なダイク貫入や山頂陥没現象に大きな役割を果たしている可能性が考えられ,しかも,今回の解析により現在においても火口から南西節点を結ぶダイクでは,マグマ活動が継続している可能性を示唆している.次回の噴火の際に,この節点がどのような役割を負うのか注目して,この節点に注目して当面観測を継続したい.

なお解析には,気象庁,防災科学研究所及び東京都の観測データも併せて利用した.記して謝意を表す.なお,本研究は文科省委託研究次世代火山研究推進事業次世代火山研究推進事業,課題B「先端的な火山観測技術の開発」サブテーマ4「火山内部構造・状態把握技術の開発」での一部として実施した.