JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC45] 活動的火山

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)

[SVC45-31] ブルカノ式噴火における火山灰放出量と噴火微動継続時間の関係から推定した噴火発生過程:霧島山新燃岳噴火の場合

*及川 純1田島 靖久2 (1.東京大学地震研究所、2.日本工営(株))

キーワード:ブルカノ式噴火、火山灰放出量、噴火継続時間、噴火発生過程

2008年8月に始まった霧島火山群の新燃岳の噴火活動は, 2011年に準プリニー式噴火を含む大きな噴火活動が起こった後,6年の休止期を経て2017年10月に噴火活動を再開し,2018年3月〜6月に噴火活動があって,現在は小康状態にある.及川・田島(2019a,2019b)は,一連の噴火活動のうち,ブルカノ式噴火に着目し,火山灰噴出量は噴火微動継続時間の2乗に比例する関係があることを明らかにした.本研究は,簡単な噴火発生場のモデルを考える事により,この関係性の意味と噴火発生過程を考察する.
まず,観測量を振り返る.及川・田島(2019a,2019b)は,2011年および2018年に新燃岳で発生したブルカノ式噴火のうち,個別の火山灰放出量が推定されている噴火に関して放出量と噴火微動に関する諸量を比較した.図は,火山灰噴出量と噴火微動継続時間を両対数軸で表したものである.×が2018年の噴火,●が2011年の噴火に対応する.これらの分布より,噴出量と噴火微動継続時間の2乗は比例していると考えられる.
次に,ブルカノ式噴火に関して,簡単なモデルを考える.火口直下に噴火するマグマの溜まりを考え,円筒状の火道が火口まで伸びているとする.ここで火道の断面積をS,長さをHとする.噴火するマグマは余剰体積Veとしてマグマ溜りに加わり,弾性変形によって圧力が上昇するとする.マグマ溜りの体積(V)の変化と圧力(P)変化は,弾性定数,半径を含む定数AでdV=AdPと表される.火道中の流れは,準定常を仮定すると,平均の流れの速さuはun = B(P-Pa)と表せる.ここに,Bは,マグマの物性,火道の断面積や長さを含む定数,Paは火口付近の圧力である.また,nは流れが層流の場合1,乱流の場合2となる.それぞれの場合にBの表記は変わる.本研究では乱流を仮定する.爆発で噴火が始まった直後にマグマの流れが確立した後,以上の設定で噴火が進み,速度が0になり噴火が止むまでの時間をTeとすると,Dを定数(D=ABS2/4)として,Ve = D・Te2が導かれる.すなわち,噴出量は噴火継続時間の2乗に比例する.
本研究は,簡単な噴火モデルを仮定して,噴出量が噴火継続時間の2乗が比例する事を示したが,重要な仮定は,火道内の流れを準定常の乱流の流れとしたこと,火道の形状や噴火マグマの物性が変わらないことである.新燃岳の噴火に関しては,2011年の噴火で,火口が溶岩で埋められた後,噴火発生場が大きく変わる事無く噴火を続けているのではないかと考えられる.