JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC45] 活動的火山

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)

[SVC45-33] 霧島硫黄山の2018年4月19日水蒸気噴火に伴うパルス状空振のメカニズム

*村松 弾1松島 健2市原 美恵3 (1.九州大学大学院理学府地球惑星科学専攻、2.九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター、3.東京大学地震研究所)

霧島硫黄山で4月19日15:39に発生した小規模水蒸気噴火に伴う空振シグナルが硫黄山近傍に展開した空振計で捉えられた。東大地震研・九大(2018)の報告によれば、噴火開始から約4時間後の19:20ごろから空振の低周波パワーが増大し、同時刻に気象庁の監視カメラで噴気域の拡大が確認されている。本研究ではこの空振シグナルの変化に着目し、水蒸気噴火活動との関連について考察する。周波数変化が報告されている19:20頃の波形を精査したところ、高周波なパルス状シグナルが多数記録されていた。一方で、低周波パワーが最大となった22:00頃には低周波なN型のパルス状シグナルが約2秒間隔で連続的に記録されていた。本研究では前者をA-type、後者をB-typeのパルスと呼ぶ。両者のパルスについて周波数解析を行ったところ、A-typeパルスは卓越周波数の平均値が1.2 Hzの低周波部分と9.0Hzの高周波部分が重畳していることが分かった。B-typeパルスの卓越周波数の平均値はA-typeパルスの低周波部分と同じ1.2 Hzであった。周波数解析の結果を基に考察した結果、A-typeパルスの高周波部分は気泡破裂音、A-typeパルスの低周波部分とB-typeパルスは流体中での気泡の固有振動により励起されたと考えられる。以上の結果からパルス状空振の発生メカニズムと噴火表面現象との関係について考察する。気泡破裂音を起こす1つの要因として、流体に降伏応力が存在することが室内実験より示されており(Vidal et al., 2008, PRE)、水蒸気噴火の発生環境で降伏応力をもつ流体としては泥が考えられる。また破裂音発生と噴気孔拡大が同時期に起こっていることから、表面現象の遷移について以下のように解釈できる:①噴火初期は比較的乾いた火口域からガス・土砂噴出、②媒質の弱化と水の付加による噴気孔拡大および降伏応力を持つ泥の形成→気泡破裂モード(A-typeパルス)、③さらなる水の付加による懸濁液形成→気泡振動モード(B-typeパルス)。これらの結果は水蒸気噴火の表面現象とダイナミクスを理解する上で重要な知見になると考えられる。

謝辞
研究の遂行に当たって、文部科学省「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」「次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト」および地震研究所共同利用(2016B03)の資金等の援助を受けた。記して感謝申し上げます。