[SVC45-P07] 境界要素法に基づく火山周辺の気象庁傾斜計データの評価の検討(2)
キーワード:傾斜変動、境界要素法、山体変形
火山活動の変化に伴う微小な地殻変動を捉えるため,気象庁では火口周辺への傾斜計観測点の整備を進めてきた.火口周辺で捉えられる地殻変動データは火口下浅部の火山活動に伴うものと考えられるため,火山活動の評価・監視をする上で重要である.火口付近の浅い圧力源による地殻変動データは,観測点が急峻な火山体地形の上に設置されていることもあり,地形形状の効果を受けている.これまで,地殻変動データから圧力源を推定する解析は半無限均質媒質を仮定したものが多く行われてきたが,火口下浅部の圧力源では,観測点の標高が圧力源よりも下になる場合などで,地殻変動量をうまく求めることができない.本研究では,火口付近の浅い圧力源の変動による地殻変動データの評価する手法の開発を目的として3次元境界要素法により,那須岳を対象として浅部の圧力源による地殻変動を山体地形の効果を取り入れて求めた.
境界要素法では,地表の地形を考慮して任意の形状の圧力源による地殻変動を数値計算により求めることができる.本研究では,川口・他(2018, JpGU)などで用いた境界要素法により地殻変動を求めるプログラムを改良して使用した.那須岳の山体形状は国土地理院の10 mメッシュの数値標高データ(DEM)を用いて作成した.圧力源として,一定の圧力を加えた球状圧力源を想定した.那須岳では,山頂から距離約600 m,標高1700mの場所に傾斜計観測点が設置されている.山頂直下の海抜よりも浅い場所に圧力源を設定して数値計算によりこの観測点での傾斜変化量を求めた.数値計算の結果,圧力源の標高が海抜0m付近の場合,火口周辺の傾斜計で観測される傾斜変化量は半無限均質媒質を仮定した場合と比較して数%程度であった.一方,圧力源の標高が海抜1000m以上の場合では,数値計算で求めた傾斜変化量は半無限均質媒質を仮定した場合の数倍以上になり,大きく異なることが分かった.このことは,浅い圧力源による地殻変動データの解析において,地形の効果が圧力源の深さや変化量などの推定結果に大きく影響することを示している.今後は,地形の効果が圧力源の解析結果に与える影響の定量的な評価についても検討していく.
境界要素法では,地表の地形を考慮して任意の形状の圧力源による地殻変動を数値計算により求めることができる.本研究では,川口・他(2018, JpGU)などで用いた境界要素法により地殻変動を求めるプログラムを改良して使用した.那須岳の山体形状は国土地理院の10 mメッシュの数値標高データ(DEM)を用いて作成した.圧力源として,一定の圧力を加えた球状圧力源を想定した.那須岳では,山頂から距離約600 m,標高1700mの場所に傾斜計観測点が設置されている.山頂直下の海抜よりも浅い場所に圧力源を設定して数値計算によりこの観測点での傾斜変化量を求めた.数値計算の結果,圧力源の標高が海抜0m付近の場合,火口周辺の傾斜計で観測される傾斜変化量は半無限均質媒質を仮定した場合と比較して数%程度であった.一方,圧力源の標高が海抜1000m以上の場合では,数値計算で求めた傾斜変化量は半無限均質媒質を仮定した場合の数倍以上になり,大きく異なることが分かった.このことは,浅い圧力源による地殻変動データの解析において,地形の効果が圧力源の深さや変化量などの推定結果に大きく影響することを示している.今後は,地形の効果が圧力源の解析結果に与える影響の定量的な評価についても検討していく.