JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC45] 活動的火山

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)

[SVC45-P22] だいち2号を用いた小笠原諸島西之島の溶岩噴出率

*安藤 忍1奥山 哲2松末 伸一3 (1.気象研究所 地震津波研究部、2.気象研究所 火山研究部、3.気象庁 火山課)

キーワード:だいち2号、スポットライトモード、相関画像解析、溶岩噴出率、西之島

2013年11月に噴火が始まった小笠原諸島の西之島では,活動の消長を繰り返しながら,現在も噴火活動を継続している。噴火活動は,大きく第I期:2013.11–2015.12,第II期:2017.4–2017.8,第III期:2018.7–2018.8,第IV期:2019.12–(継続中)に分類され,第III期こそ海岸まで溶岩流の到達はなかったが,それ以外では,すべて陸域を拡大させるほどの活発な噴火活動であり,2020年1月末現在,陸域の面積は約3.2km2となっている(図)。
気象研究所では,だいち2号(ALOS-2/PALSAR-2)のデータ利用が可能になった2014年8月以降,大規模地震や火山周辺について解析を行っている。西之島周辺においても,PALSAR-2による複数の観測モードが実施され,データを利用することが可能であるが,中でもPALSAR-2で新たに追加された分解能3m×1m(Rg×Az)であるスポットライトモード(SPT)の観測は,概ね回帰日数である14日毎で観測されており,高空間分解能かつ高時間分解能の観測が実現されている。
本発表では,主にSPT観測による相関画像解析について報告する。相関画像は,2時期の観測データを正確に位置合わせすることで,ピクセル毎の相関度分布を0–1で画像化したものである。活発な火山活動時期には刻々と地表変化が発生するため,時間経過とともに相関度は著しく低下する。しかしながら,SPT観測は14日回帰毎での撮像が実行されたため,非噴火時期には,相関度低下はほとんどなく,高相関が保たれることがわかった。このため,噴火時期における相関低下はそのまま溶岩の流下域に相当すると仮定し,溶岩の噴出率を計算した。なお,溶岩の厚さは,東京大学地震研究所の報告より,陸域で2.5–5m,海域で10mと仮定し計算した。その結果,溶岩の平均噴出率は,第I期の後半(2015.3–2015.12):0.09–0.16 × 106m3/日,第II期:0.10–0.18 × 106m3/日,第III期:0.04–0.07 × 106m3/日,第IV期(–2020.2中旬):0.21–0.38 × 106m3/日となった(図)。前野ほか(2016)は第I期の最初の15か月の平均噴出率は0.2 × 106m3/日,最盛期の2014年9月は0.5 × 106m3/日と試算しており,2019年12月に始まった第IV期の噴火活動は,現時点で第I期に匹敵する溶岩噴出率であることがわかった。また,発表では,溶岩流下域近傍で見られる衛星視線方向伸長の距離変化についても議論する。
本解析で用いたPALSAR-2データは,火山噴火予知連絡会が中心となって進めている防災利用実証実験に基づいて,JAXAにて観測・提供された。PALSAR-2に関する原初データの所有権はJAXAにある。PALSAR-2の解析にはGammaおよびRINC(Ozawa et al, 2016)を使用した。また,処理の過程では,国土地理院技術資料C1-No.448, 453, 458, 462, 463, 478, 489から生成した地形データを使用し,地図の描画にはGMT(Wessel and Smith, 1998)を用いた。