JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC45] 活動的火山

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)

[SVC45-P30] 水準測量によって測定された桜島火山の地盤上下変動(2018年11月~2019年11月)

*山本 圭吾1松島 健2吉川 慎3井上 寛之3園田 忠臣1山田 大志1唐 懌塵2吉永 光樹2池亀 孝光4岸本 博志4大倉 敬宏3 (1.京都大学防災研究所、2.九州大学大学院理学研究院、3.京都大学大学院理学研究科、4.気象庁)

キーワード:桜島火山、精密水準測量、地盤上下変動

2019年度より開始された「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画第2次」における課題「桜島火山における火山活動推移モデルの構築による火山噴火予測のための総合的観測研究」の一環として,2019年11月に桜島火山において一等水準測量の繰返し観測を実施した.本講演では,この測量の結果について報告し,2018年11月に実施した前回測量以降の桜島火山の地盤上下変動について議論する.
水準測量を実施した路線は,桜島西部山腹のハルタ山登山路線,北部山腹の北岳路線の2路線である.路線総延長は約21 kmであった.これらの路線を,2019年11月11日~15日の期間において測量に当たった.測量方法は,各水準点間の往復測量で,その往復差は一等水準測量の許容誤差を満たすようにした.測量における誤差は,1 km当りの平均自乗誤差が,ハルタ山登山路線および北岳路線においてそれぞれ±0.27 mm/kmおよび±0.22 mm/kmという結果となり,高精度の一等水準測量を行うことができた.
桜島西岸の水準点BM.S.17を不動点(基準)とし,各水準点における比高値を計算した.これを前回の2018年11月に行われた測量結果(山本・他,2019)と比較することで,2018年11月から2019年11月の期間の約1年間における地盤上下変動量を計算した.
計算された地盤上下変動量から,桜島中央部付近に比較的近い水準点においては若干の地盤沈降が認められるものの,全ての水準点において地盤上下変動量が2 mm以下とほとんど変動が生じていないことが確認された.桜島北岸において顕著な地盤変動が生じていないことが示唆され,前々回から前回測量までの期間(2017年11月から2018年11月)の測量結果(山本・他,2019)に続き, 2019年11月までの1年間においても姶良カルデラ地下のマグマ溜まりにおける増減圧がかなり小さい可能性が考えられる.
桜島中央部に比較的近い水準点においては若干の地盤沈降が認められたので,茂木モデルに基づき,得られた上下変動量データから圧力源解析を行った.測量を実施した水準点の空間分布が限られているうえに変動量も小さいため試行的な結果であるが,圧力源の水平位置を南岳直下と仮定し,深さ約0.3 kmに減圧源(体積減少量約3.6万立方メートル)が推定された.2018年11月~2019年11月の期間,南岳直下においては減圧傾向であるものの,その減圧量はかなり小さいことが示唆される.