JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC45] 活動的火山

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)

[SVC45-P33] 口永良部島火山2020年噴火降下火砕物の産状と分布

*長井 雅史1中川 正二郎2入山 宙3三輪 学央1中田 節也1 (1.防災科学技術研究所 火山防災研究部門、2.屋久島地学同好会、3.九州大学 研究・産学官連携推進部)

キーワード:テフラ、水蒸気噴火、水蒸気マグマ噴火、噴煙柱、層厚-面積曲線、琉球弧

口永良部島火山新岳では2020年1月から2月にかけて断続的に噴火があり、比較的大きな噴火は2020年1月11日、1月27日と2月3日に発生した。このうち東側に隣接する屋久島や種子島で顕著な降灰が認められた1月11日と2月3日の噴火について、現地降灰調査に加えて気象庁福岡管区気象台・口永良部島火山防災連絡事務所や鹿児島県熊毛支庁屋久島事務所農林普及課の調査資料、屋久島町役場や地元住民等への聞き取り情報等により降灰分布をまとめ、採取試料の性質を確認した。
屋久島や種子島において堆積物はいずれも明灰色ないし淡く赤みを帯びた明灰色の砂質~シルト質火山灰層で、構成粒子は石質岩片や熱水変質岩片を主体とし新鮮なガラス質岩片は少ない。2月3日噴火では、東に伸びる降灰軸上の屋久島北西部で430g/m2程度、北東部で100 g/m2程度、種子島南部で30 g/m2程度の堆積物が認められた。屋久島北西部では細粒火山礫も含まれており、最大粒径は降灰軸よりも北側で大きい傾向があった。降灰軸と最大粒径分布の軸のずれは高度によって風向や風速が異なっていたことで説明されうる。降灰分布や最大粒径の分布は2019年1月17日噴火に似ているが、それよりも分布がやや北方に寄っており、屋久島での堆積量の多い領域の幅が広い。
降下火砕物の噴出量(遠方地域堆積量データによる最小見積り)は堆積密度を1000kg/m3としてFierstein and Nathenson (1992)の方法により求めた結果、2020年1月11日噴火では約1.5万t、2月3日噴火では9.6万tと見積もられる。いずれも同様な方法で見積もった2015年5月29日噴火の降下火砕物の噴出量(約12万t)より小さい。2015年以降、噴出量が推定された口永良部島の噴火では噴煙高度と噴出量の間に正の相関関係が見られる。