JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC46] 火山防災の基礎と応用

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、吉本 充宏(山梨県富士山科学研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)、久保 智弘(山梨県富士山科学研究所)

[SVC46-02] 活火山の火口付近の地形計測の高精度化に関する諸問題

*千葉 達朗1佐々木 寿1荒井 健一1森 貴章1望月 拓実1三浦 俊介1藤田 浩司1浦山 利博1野中 秀之1佐野 実可子1成毛 志乃1 (1.アジア航測株式会社)

キーワード:無人機、測量、SfM/MVS、火山噴火

1.はじめに
火山が噴火した場合、火口付近の地形変化量の計測は非常に重要である。たとえば、1986年の伊豆大島噴火では、噴火中の火口から500mの展望台付近まで立ち入り現地調査を行うことができた。しかし、現在では、火山噴火警戒レベル2以上で立ち入禁止となる地点であり、事実上現地確認は難しいと思われる。また、人工衛星や航空機による遠隔からの観測や撮影だけでは、情報が不十分と考えられ、いち早く噴火の状況や規模を検討する上で大きな課題となっていた。そこで、文科省次世代火山研究推進事業では、2016年から、課題Dのサブテーマ1として「 無人機(ドローン等)による火山災害のリアルタイム把握手法の開発」の検討を進めてきた。火口やその周辺の地形を、できるだけ早く精密に計測する手段として、離れた地点からUAVを飛行させ、撮影した写真からSfM/MVSによる3Dモデル作成を行った。また、いくつかの噴火では、有人ヘリやセスナからの画像からも、同様の検討を行ってきた。その結果、得られた成果については、JPGUや火山学会、火山噴火予知連に報告をしてきた(阿蘇山、本白根山、新燃岳)。しかし、UAV撮影には、許認可や気象条件や離着陸地点、飛行時間、対地高度などの制約もあり、短時間に成果を提供するという点では、まだ問題点が山積している。また、写真の画質や距離によって3Dモデルができなかったケースもあ る。ここでは、これまでの取り組みの中から明らかになった、撮影手法、精度と処理時間の短縮に向けた教訓を整理する。
2.撮影
1)UAVによる撮影
UAVによる火口付近の撮影は、2016年阿蘇山、2017年三原山、2018年桜島、2019年三原山で実施した。このうち、自律飛行は、2016年阿蘇と、2019年の三原山である。2017年の三原山と2018年の桜島は、手動で撮影を行った。
自律飛行は、撮影範囲があらかじめ設定でき、GNSSの感度が十分で、風も弱く飛行の状況が把握可能な場合に実施した。一方で、三原山2017年のような特殊な飛行コース(火口の内部に降下させ、周囲360度を高度を変えて撮影)や、桜島2018年のように、断続的に噴火が発生している状況では、咄嗟の回避などが求められるので、マニュアルで撮影を行った。モデル作成に関して言えば、直下視のオーバーラップ80%以上の規則的な撮影により良いモデルができるとされており、自律飛行のコースの設定はその方針で行った。対地高度は、必要とされる分解能と噴気の影響高度を鑑みて決定した。阿蘇の場合は、対地高度が350mに達する地点もあったので、航空局へ申請し許諾を得る必要があった。飛行時間は、バッテリーの容量に大きく左右され、UAVの速度から離着陸地点の位置が制約を受ける。飛行可能時間は約15分程度であり、阿蘇では火口から1.3㎞の駐車場に離着陸地点を設定せざるを得なかった。しかし、噴火警戒レベルの関係で立ち入り禁止区域であったために、阿蘇町からの特別許可を得て、京都大学と気象庁の立会いの下で、計測を行った。この時は、噴火から撮影までに2か月を要することになった。
2)有人ヘリやセスナからの撮影
本白根山噴火および新燃岳噴火の際には、東大地震研および防災科研および産総研および熊本大から空撮写真の提供を受け、モデル作成を試みた。整理すると、良い3D地形モデルが結果が得られたものは、広角レンズを使用し、ラップ率も十分に高いものであった。一方で、モデル作成に失敗したものは、望遠レンズを使用したものや、撮影中に地形が変化したもの、噴火中の画像、距離が離れている画像であった。撮影法は、すべて火口の上空を避けた斜め撮影であるが、周回撮影の場合は、逆光側のモデルの成功率が低く、順光側の成功率が高かった。また、風上側の撮影は、ヘイズが少なく、モデルが良くできた。火口までの距離や対地高度に関しては、より近く、より低いほど良い結果が得られた。使用枚数は、多すぎるくらいがよく、異なる撮影距離のものを含めないほうが良い結果が得られた。
3.モデル作成
カメラの位置については、GNSSで計測されていることが大前提であり、動画のファイルの場合は、静止画に切り出してEXIFに位置情報を埋め込むことで処理が可能となる。しかし、地上にGCPがない場合には、モデルの位置だけでなく、地面がおおきく傾くケースがあり、おおまかでも数点以上のGCPの設定は必要である。火口の中央付近は、噴煙の影響などで、GCPが取れないために、完成したモデルが、ドーム状に変形してしまうことがあった。非線形なので、位置や傾きのように補正が困難であった。
4.位置あわせと地形変化の計算
モデルの位置合わせと地形変化量の算出については、既往の精密な計測データが必須であり、解像度は1m以上は欲しいところである。しかしながら、噴火前から準備できていないケースでは、レーザ計測状況を調べ、使用許諾や借用を願い出ることになり、地形変化量を算出時間短縮にとっての課題である。伊豆大島では、三原山の中央火口付近での噴火が繰り返されているので、あらかじめ撮影し、地形データを取得することができた。
5.まとめ
斜め写真からのSfM/MVS法による地形計測を、活火山の火口に適用する実証実験を行った。4年の結果をまとめると、GCPをきちんと取ることができれば、十分に実用的である。今後、噴火が起きそうな地点でのGCP精密計測を実施することで、レーザ計測よりも精度が出るケースこともあると思われる。