JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC46] 火山防災の基礎と応用

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、吉本 充宏(山梨県富士山科学研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)、久保 智弘(山梨県富士山科学研究所)

[SVC46-04] 冷却塔を対象にした降灰実験

*大塚 清敏1野畑 有秀1諏訪 仁1久保 智弘2宮城 洋介3中田 節也3宮村 正光3 (1.株式会社大林組、2.山梨県富士山科学研究所、3.防災科学技術研究所)

キーワード:火山灰、事業継続、機能被害、空調用冷却塔、重要施設

2014年の御嶽山、2018年の草津本白根山などで死傷者を出す火山噴火が発生し、それらを機に火山災害への関心が急速に高まってきた。また、富士山の宝永噴火のような大規模な爆発的噴火を想定すると、火口周辺の噴石や火砕流などに加えて、首都圏を含む広範囲に降灰が及ぶと予想されている1)。降灰の建物への影響では、積灰荷重による屋根の変形・崩落、屋外設置の空調関連設備である室外機や冷却塔、換気用フィルタの目詰まりなど、さまざまな被害様態が懸念される。筆者らは、それらを統合的に評価するため、降灰被害予測コンテンツの開発を行っている2)。その中で、建物の空調機能維持に室外機に関する降灰実験を行い2017年度の大会で発表した。その後、さらに冷却塔(クロスフロー方式)に関する降灰実験を実施し、冷却塔の稼働状態を調べた。
 実験では、冷却塔充填材の前面において、電動のふるいによって降灰深約55mmまで降灰させた。冷却塔充填材内部は、循環水が流下しているが、侵入した火山灰はその水によって流され、充填材内部の大部分では通風を損なうような目詰まりは起こらず、実験期間を通じて通風量の目立った変化はなかった。一方、充填材底部や冷却水配管につながる釜場には火山灰の堆積が生じ、それらの冷却水へのまとまった量の混入が認められた。釜場や配管中の火山灰により、降灰深30mmあたりから冷却水配管への気泡の侵入やそれによる流量の変動が見られ、40mmを超すとそれらは顕著になり、逆止弁の機能不全も現れた。今回の実験で最も目立ったのは送水ポンプのメカニカルシールの摩耗である。55mmに達した時点でポンプから漏水が発生しそこで実験を終了させた。冷却塔では、送風機能には大きな影響は出なかったが、ポンプの摩耗など冷却水配管により大きな影響の出る可能性が示唆された。降灰深に応じた建物機能への影響事例を作成し、自治体など防災担当者を支援するための情報ツール開発に繋げる予定である。

【参考文献】
富士山ハザードマップ検討委員会、2004、2) 文部科学省:次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト