JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC46] 火山防災の基礎と応用

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、吉本 充宏(山梨県富士山科学研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)、久保 智弘(山梨県富士山科学研究所)

[SVC46-P01] 衛星SARを用いた降灰量分布推定手法の研究:降灰による干渉性劣化成分の定量的抽出

*小澤 拓1藤田 英輔1 (1.防災科学技術研究所)

キーワード:火山灰、合成開口レーダー、干渉性

火山噴火によって火山灰が堆積すると、その後の降雨によって土石流が発生する場合があり、それが大きな災害を生じさせる可能性がある。その減災においては、降灰量分布を迅速に把握し、土石流発生の予測につなげることが重要である。しかし、現時点における降灰量分布の把握は、主に現地調査によって行われており、速報性や労力の観点から、簡便かつより速報性のある手法の開発が求められている。その解決の一つとして、衛星リモートセンシング技術の活用に期待されている。そこで、第2期戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」課題における開発項目の一つとして、衛星搭載型合成開口レーダー(SAR)を用いた降灰量推定手法の開発を行う。本発表においては、SAR干渉解析における、降灰による干渉性劣化成分を定量的に抽出する手法について述べる。

本開発においては、SAR干渉法における干渉性に注目する。SAR干渉解析結果において、干渉性が高ければ明瞭な干渉縞が見られ、低ければ短周期のノイズが卓越し、干渉縞は不明瞭になる。一般に、その干渉性の劣化は、干渉させる2つのSAR画像取得時における地表でのレーダー波の散乱が異なることによって生じる。噴火時を含む干渉ペアのSAR干渉解析においては、地表面が火山灰に覆われることによるレーダー波の散乱の変化に起因する干渉性劣化域が、火口周辺において良く見られる。このような干渉性劣化と降灰量を定量的に関係付けられれば、SAR干渉解析から降灰量を求められるはずである。そこで、本解析では、非噴火時のSARデータから、降灰以外の要因による干渉性劣化の時間変化モデルを構築し、そのモデルとの比から、降灰による干渉性劣化成分の定量的な推定を試みる。本発表においては、その干渉性劣化の時間変化モデルの構築の試みについて述べる。

干渉性は、地表面の被覆や形状の変化、水分量の変化などによってレーダー波の散乱が変化し、時間とともに劣化する。このような変化を指数関数で仮定し、PALSAR-2によって観測された口永良部島の干渉性の時間変化に”g = Aexp(Bt) + C”の関数をあてはめたところ、0.2を超える大きな残差が求まった。ここでgはコヒーレンス、tは干渉ペアの観測間隔、A、B、Cは定数である。大きな残差は、植生が濃い領域で顕著に見られたため、その原因は植生による散乱の時間変化を精度よくモデル化できていないためと推測される。植生の繁茂は、四季によって変化することから、年周的に変化すると考えられるので、年周と半年周成分を加えた”g = Aexp(Bt){Csin(2 pai t)+Dcos(2 pai t)+Esin(4 pai t)+Fcos(4 pai t)}+G”の関数をあてはめたところ、ほぼ0.1以下の残差で、観測されたコヒーレンスを説明することができた。しかし、基準とするSARデータを別の時期に取得されたSARデータを用いた場合、モデルとの残差が大きくなる場合があり、指数関数成分の時定数の時間変化も考慮する可能性があるのかもしれない。