JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC46] 火山防災の基礎と応用

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、吉本 充宏(山梨県富士山科学研究所)、千葉 達朗(アジア航測株式会社)、久保 智弘(山梨県富士山科学研究所)

[SVC46-P02] 確率論的降灰リスク評価に向けた風向・風速データの設定方法に関する研究

*時実 良典1若浦 雅嗣1菊地 ひめか1 (1.応用アール・エム・エス株式会社)

キーワード:確率論的降灰リスク評価、Tephra2

大規模噴火による降灰(降下火砕物)は上空の風により広範囲に移流・拡散することから、火山周辺のみならず、火山から数百km離れた場所にまで影響を及ぼす。この影響の不確実性は、仮に噴火現象そのものが同一であっても、上空の風向・風速の違いによる不確実性が大きいことから、降灰リスク評価においては上空の風の多様性を適切に評価する事が極めて重要である。そこで、例えば近年作成された降灰ハザードマップでは過去数年間の風を網羅的に用いた降灰シミュレーションを実施して、最大層厚を示すといった取り組みが行われている(十和田火山防災協議会,2018)。また、長期再解析気象データ(JRA-55)による過去数十年間の風データを用いた降灰シミュレーションも試みられている(佐々木ほか,2019)。
一方で、確率論的降灰リスク評価では上記の風向・風速だけでなく、噴火規模などを分岐させたロジックグリーを用いることが一般的である(Jenkins, 2012)。このロジックツリーに、長期間の風向・風速を網羅的に適用した場合には、分岐の数が膨大になる。さらに、全世界の全ての火山を対象とする場合には、風向・風速の分岐数を抑えることが必要となる。
そこで、本研究ではできるだけ少ない風向・風速データにより、降灰量の不確実性を考慮する方法について検討した。検討に当たっては、まず過去30年間の全ての風向・風速データ(n=10,685)を用いて降灰量の条件付き超過確率のイベントカーブ(ハザードカーブ)を算出した。次に、風向・風速が季節性は強いものの定常なデータである事から月ごとにランダムサンプリングを行って、このサンプリングした風向・風速データによりハザードカーブを作成した。この結果として、火口の東方では120まで間引いても影響がない(Fig. 1)ことを確認した。一方で、他の方位では、全ての風向・風速データによるハザードカーブを再現するためにはより多くの風データが必要で、概ね240~600程度の風データによる降灰量が必要(Fig. 2)である事を確認した。