[SVC46-P04] UAVを用いて作成した地形モデルの精度向上について –三原山山頂火口を対象に–
キーワード:無人航空機、活火山、SfM/MVS
1.はじめに
2019年10月6日に発生した台風19号は、大型で強い勢力のまま伊豆半島に上陸し、関東地方を通過した。我々は伊豆大島の次の噴火に備えて、2017年にUAVを用いて三原山山頂火口の地形モデルを作成していた。しかし、台風19号の影響により、三原山山頂火口周辺の地形が変化した可能性があるため、UAVを用いて最新の火口周辺の地形モデルを再作成した。地形モデルは、UAVで撮影した画像からSfM/MVSを活用して作成した。ソフトウェアは、Metashapeを用いた。
本研究では、地形モデルの精度を評価するため、火口周辺に基準点(GCP:Ground Control Point)を設置し、基準点の有無による地形モデルの位置精度について検証した。また、作成した火口周辺の地形モデルから火口の容積計算及び崩壊の状況確認を行った。
2.伊豆大島、三原山山頂火口の撮影
2019年11月7日~11月8日に、伊豆大島で実証実験を実施した。使用したUAVはMatrice210(DJI社製)、搭載したカメラはZENMUSE X4S(可視光)である。火口周辺を網羅するように、カメラの向きを垂直にして、UAVを自動航行させた。撮影した画像の枚数は、約500枚である。
3.基準点(GCP)の設置
これまで、UAVに搭載されたGPSから取得した位置情報を使用していたが、既存の航空レーザ測量と比較すると、位置精度、特に高さ方向の精度に課題があった。そこで、今回の飛行では基準点を設置し、地形モデルの位置精度について検証した。基準点は、UAV計測範囲に対して、均一になるように火口外輪の遊歩道沿いに18点設置した。設置した基準点に対して、ネットワーク型RTK-GPS測位(VRS方式)を行い、精度の高い位置情報を取得した。
基準点の有無による地形モデルの位置精度(標高値)を比較すると、「基準点なし(RMS:24.96m)」に比べて、「基準点あり(RMS:0.10m)」で地形モデルを作成した方が、大幅に誤差が小さくなるという結果が得られた。特に高さ方向の精度が小さくなるという結果となった。地形モデルの差分解析を行うにあたって、位置精度の誤差が小さいことは重要であり、噴火前から計測候補地の基準点座標を取得・蓄積していくことが大事であると考えられる。
4.差分解析
前回2017年の撮影時の画像について、2019年の基準点を適用してモデルを再作成し、差分解析を行った。中央火口の西側の鉛直な崖の一部が崩壊し、火口底に堆積したことが確認できた。崩壊時期は、火山噴火予知連資料でみると、9/26-10/9の間に発生したことが明らかで、台風19号襲来時に発生したものと思われる。
5.まとめ
三原山山頂火口周辺に基準点を設置し、これまでよりも位置精度の高い地形モデルを作成することができた。火口の容積が明らかとなったことから、噴火後に火口上空を飛行できない場合でも、斜めから撮影した画像から火口内に蓄積した溶岩量を算出することが可能となった。また、2017年と2019年の地形モデルの差分解析から三原山山頂火口の西側斜面にて、崩壊していることが確認できた。
地形モデルの作成では基準点が地形モデルの精度に対して重要であることが分かったが、現実的には噴火中に火口周辺へ立ち入ることは難しく、基準点の設置は困難である。最新のUAVでは、RTK-GNSS搭載型があり、基準点を設置しなくても今回と同様の高精度の地形モデルを作成できる可能性がある。このような技術を活用し、より高精度な地形モデルを短時間に作成できるように、検討を進めていきたい。
本研究は、文部科学省の次世代火山研究・人材育成総合プロジェクトの一環で行ったものである。
2019年10月6日に発生した台風19号は、大型で強い勢力のまま伊豆半島に上陸し、関東地方を通過した。我々は伊豆大島の次の噴火に備えて、2017年にUAVを用いて三原山山頂火口の地形モデルを作成していた。しかし、台風19号の影響により、三原山山頂火口周辺の地形が変化した可能性があるため、UAVを用いて最新の火口周辺の地形モデルを再作成した。地形モデルは、UAVで撮影した画像からSfM/MVSを活用して作成した。ソフトウェアは、Metashapeを用いた。
本研究では、地形モデルの精度を評価するため、火口周辺に基準点(GCP:Ground Control Point)を設置し、基準点の有無による地形モデルの位置精度について検証した。また、作成した火口周辺の地形モデルから火口の容積計算及び崩壊の状況確認を行った。
2.伊豆大島、三原山山頂火口の撮影
2019年11月7日~11月8日に、伊豆大島で実証実験を実施した。使用したUAVはMatrice210(DJI社製)、搭載したカメラはZENMUSE X4S(可視光)である。火口周辺を網羅するように、カメラの向きを垂直にして、UAVを自動航行させた。撮影した画像の枚数は、約500枚である。
3.基準点(GCP)の設置
これまで、UAVに搭載されたGPSから取得した位置情報を使用していたが、既存の航空レーザ測量と比較すると、位置精度、特に高さ方向の精度に課題があった。そこで、今回の飛行では基準点を設置し、地形モデルの位置精度について検証した。基準点は、UAV計測範囲に対して、均一になるように火口外輪の遊歩道沿いに18点設置した。設置した基準点に対して、ネットワーク型RTK-GPS測位(VRS方式)を行い、精度の高い位置情報を取得した。
基準点の有無による地形モデルの位置精度(標高値)を比較すると、「基準点なし(RMS:24.96m)」に比べて、「基準点あり(RMS:0.10m)」で地形モデルを作成した方が、大幅に誤差が小さくなるという結果が得られた。特に高さ方向の精度が小さくなるという結果となった。地形モデルの差分解析を行うにあたって、位置精度の誤差が小さいことは重要であり、噴火前から計測候補地の基準点座標を取得・蓄積していくことが大事であると考えられる。
4.差分解析
前回2017年の撮影時の画像について、2019年の基準点を適用してモデルを再作成し、差分解析を行った。中央火口の西側の鉛直な崖の一部が崩壊し、火口底に堆積したことが確認できた。崩壊時期は、火山噴火予知連資料でみると、9/26-10/9の間に発生したことが明らかで、台風19号襲来時に発生したものと思われる。
5.まとめ
三原山山頂火口周辺に基準点を設置し、これまでよりも位置精度の高い地形モデルを作成することができた。火口の容積が明らかとなったことから、噴火後に火口上空を飛行できない場合でも、斜めから撮影した画像から火口内に蓄積した溶岩量を算出することが可能となった。また、2017年と2019年の地形モデルの差分解析から三原山山頂火口の西側斜面にて、崩壊していることが確認できた。
地形モデルの作成では基準点が地形モデルの精度に対して重要であることが分かったが、現実的には噴火中に火口周辺へ立ち入ることは難しく、基準点の設置は困難である。最新のUAVでは、RTK-GNSS搭載型があり、基準点を設置しなくても今回と同様の高精度の地形モデルを作成できる可能性がある。このような技術を活用し、より高精度な地形モデルを短時間に作成できるように、検討を進めていきたい。
本研究は、文部科学省の次世代火山研究・人材育成総合プロジェクトの一環で行ったものである。