JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-03] Sustainable global groundwater management for human security

コンビーナ:和田 義英(国際応用システム分析研究所)、谷口 真人(総合地球環境学研究所)、座長:和田 義英(国際応用システム分析研究所)、Chairperson:谷口 真人(総合地球環境学研究所)

[U03-07] 持続可能な地下水管理と人間の水安全保障によりよく貢献するためのグローバルな水文モデルの開発と拡張

★招待講演

*花崎 直太1Boulange Julien1Ai Zhipin1Padiyedath Gopalan Saritha1高田 久美子1 (1.国立環境研究所)

キーワード:貯水池操作、灌漑、高解像度

地下水は世界の重要な水資源である。近年、多くの地域で地下水枯渇が懸念されており、持続可能な管理が求められている。地下水が枯渇するほど利用されるには様々な背景がある。端的に言えば、水需要が涵養量に対して過大であることに加え、代替の水源オプションが乏しいことにある。ゆえに、地下水問題の解決には地下水だけでなく、水需要全体と表流水を含めた水循環全体のダイナミクスを把握する必要がある。全球水資源モデルH08は過去15年にわたり、世界の水利用と水循環の全体像を解明するために開発されてきたモデルである。本発表では、地下水問題の解決につながる、最新の研究をいくつか紹介したのち、全球水資源モデルの開発応用に関する今後の展望について述べたい。

H08が現在着目しているのは次のようなテーマである。第一のテーマは貯水池操作である。貯水池は表流水資源の季節変動と年々変動を軽減するが、全球水文モデルの中での扱いはいまだに初期段階を出ない。重点的な研究の結果、我々は全球水文モデルと全球洪水氾濫モデルの結合に成功し、人間活動を含む全球の表流水のダイナミクスの表現を一段階引き上げつつある。第二のテーマは農業生産性と灌漑である。世界の水利用の大半は灌漑に利用されることから、灌漑の需要と効果を把握することは全球水資源モデリングのカギである。我々は、バイオ燃料作物の生産性とその灌漑に着目し、それらをモデルの中で表現することに成功し、脱炭素化(バイオ燃料生産)、陸域生態系保全(土地利用)、持続的水利用のトレードオフの検討に取り組むことが可能になりつつある。第三のテーマはモデルの高精度・高解像度化である。多くの先行研究が示唆するように、全球水資源モデルの流量再現性は流域ベースの水文モデルと比して大幅に劣る。高精度の入力データを用意し、十分にパラメータキャリブレーションを行うことにより、タイ・チャオプラヤ川およびその他の複数の流域において、我々は実務者を満足させるほどの精度を得ることに成功しつつある。こうした研究成果をもとに、今後全球水資源モデルは地下水問題の解決や水安全保障の強化に何ができるか、何を新たに加える必要があるか、述べたい。