JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-05] 人新世・第四紀の気候および水循環

コンビーナ:Chuan-Chou Shen(High-Precision Mass Spectrometry and Environment Change Laboratory, Department of Geosciences, National Taiwan University)、横山 祐典(東京大学 大気海洋研究所 高解像度環境解析研究センター)、窪田 薫(神戸大学大学院人間発達環境学研究科)、Li Lo(Department of Geosciences, National Taiwan University)

[U05-P09] Lake water distribution derived from surface water oxygen and hydrogen isotopes around Fuji Five Lakes

*太田 耕輔1,2横山 祐典1,2宮入 陽介2山本 真也3宮島 利宏2 (1.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻、2.東京大学大気海洋研究所、3.山梨県富士山科学研究所)

キーワード:酸素・水素同位体比、富士五湖

降水・地下水・河川水を通して湖へと流れ込む水の移動過程は地域・季節ごとに異なり,詳細を明らかにすることは,重要な水資源となっているわが国の湖において,湖の環境を保全し,将来の湖の状態を知るためにも重要である。先行研究において,酸素同位体・水素同位体比は降水や地下水の由来を推定するための有効なツールとして広く利用されている.
 富士山周辺でも,降水や地下水の酸素同位体・水素同位体比の分析結果は報告されてきた.しかしながら,富士五湖の位置する富士山北麓域では南麓や東麓と比較して酸素同位体・水素同位体比が軽いことが報告されているのみにとどまっている.
 本栖湖では,表層水バナジウム濃度の継続的な調査や夏季と冬季の水温・水質調査に加え,通年の水温・水質の鉛直調査が行われ,降水量が水収支の大きなウェイトを占めていることが明らかにされたが,富士山北麓は溶岩流によって形成された地形であることから,集水域の特定が難しく,本栖湖,精進湖,西湖の間の地下水流動を考える必要性が示されるにとどまった.
 また,河口湖の水文調査及び湖底調査では,湖中央部に位置する鵜の島の東約100m の観測点で,水温及び電気伝導度の成層構造に乱れが観測され,水深約8m の湖底から,水質の異なる水の湧出が新たに確認された.以上のように富士五湖地域では継続的なデータの蓄積が少なく,富士五湖周辺は溶岩による複雑な地形であるため,酸素同位体・水素同位体の結果のみでは地下水集水域を推定することが困難であった.
 本研究では,富士五湖の湖水の酸素同位体・水素同位体を月間隔で継続的に測定し,季節ごとの水収支の検討を行うことによって,富士山周辺の湖(富士五湖)の酸素同位体・水素同位体比の季節変化とその要因を明らかにすることを目的とした.
 湖水の酸素同位体比の継続的な測定,集水域の推定を行うために,富士五湖の表層水を2018年6月から1ヶ月毎の間隔で定期的に採取し,湖水の酸素同位体・水素同位体比の測定を行った.測定には東京大学大気海洋研究所の波長スキャンキャビティリングダウン分光装置を利用した.
 河口湖,西湖,山中湖は夏にかけて同位体比が重くなる傾向が示された.この結果は夏季に蒸発の影響が強くなることと一致する.一方,本栖湖では夏季に同位体比が軽くなっていることが明らかになった.富士五湖の内,本栖湖は他の湖に比べて太平洋寄りに位置するため,夏季に移動経路の異なる降水が供給されている可能性が示唆された.
 本発表では,上記の結果に加え、湖周辺の地下水の測定結果および水収支の検討結果を加え総合的に考察し,富士五湖の地下水の集水域を推定する.