JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-10] Linking Education and Research Communities in Geosciences: Engaging the Public and Local Communities

コンビーナ:Vincent Tong(University College London)、小口 高(東京大学空間情報科学研究センター)、Renee M Clary(Mississippi State University)、久家 慶子(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻地球物理学教室)、座長:Vincent Tong(University College London)、Chairperson:小口 高(東京大学空間情報科学研究センター)、Chairperson:久家 慶子(京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻地球物理学教室)、座長:Renee M Clary(Mississippi State University)

[U10-04] 日本の地理教育に与えた国際地理オリンピックの影響

★招待講演

*井田 仁康1 (1.筑波大学人間系)

キーワード:地理教育、国際地理オリンピック、日本

日本では、学習指導要領が改訂され、高等学校では2022年から地理が必履修科目となる。ここ30年ほど高等学校の地理履修者が少なかっただけに、高等学校での地理の復権が期待されている。地理が必修化された背景には国際地理オリンピックの影響も少なくない。
 日本の地理教育は、地誌と系統地理を柱に、現代世界の理解に重点が置かれていた。基礎的な知識を全国民が身に付けられるという観点からは評価されるが、一方では暗記科目と批判されてきた。国際地理オリンピックは、こうした日本の地理教育を変革する契機の一つとなった。
 日本が国際地理オリンピックに参加するための組織を立ち上げたのは2006年である。国際地理オリンピックに参加する生徒数は増加していった。国際地理オリンピックの出題は、日本の地理教育で扱う内容とは大きく異なっていた。一つには、単なる知識を問う問題ではなく、論理的思考を問う問題が多いことである。第2にフィールドワークテストが重視されていることである。日本でもフィールドワークは推奨されているが実施率は低い。第3は、自然地理の内容が多いことである。こうした地理教育の内容の差は、日本の生徒たちが国際地理オリンピックで上位になることが難しいことにも反映している。
 国際地オリンピックが日本の地理教育に大きな影響を与えた点は、いかに地理的知識を活用して論理的に思考し、将来を考えるかといった観点である。日本次期学習指導要領の地理では、テーマ学習を取り入れ、知識、スキルを活用した学習内容となっており、未来志向の地理がめざされている。一方で、従来の地誌、系統地理というプロセスも重視し、新しい日本型地理教育を構築しようとしている。